プラチナは魅力的か?

著者:近藤 雅世
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 最近の金の価格は動意が薄いと感じるのは私だけだろうか? 小刻みに上昇して7月1日1800ドルを達成したが、その上昇の根拠を問われると良くわからない。中国の金現物需要は低迷し、金を買う人より、売る人の方が多いようだ。インドも同様で、インド国内の金価格が高くなっているため、いつも金を購入している人々は様子見となっている。政府保有金も、2018年~19年の勢いはなく、この半年で外貨準備のために金を購入した中央銀行は5行しかなく、5月はトルコとウズベキスタンの2行のみであった。金価格は高過ぎるので買いは手控えようとする人々の意識が透けて見える。いずれ第2、第3四半期の金の需要量がWorld Gold Councilから公表されるだろうが、世界の需要は大幅に減っていることが明らかになるだろう。需要が減れば価格は下がる。

 それにひきかえ、プラチナは、第1四半期の世界の需要が過去40年間で最大になったとWorld Platinum Investment Councilは述べている。中国の上海黄金交易所からの引き出し量もプラチナは昨年の5.3トンから14.5トンに約3倍に増加している。中国の貴金属商が、将来製作する宝飾品のために、安値の間にプラチナ地金を仕入れる動きだと言われている。筆者は2018年に南アのプラチナ鉱山が半年間ストライキを行ったのにプラチナ価格が下落し、市場では在庫が多いというのが下落の理由になっていた。以前世界のプラチナ地金の13%の現物取引を扱っていた筆者としては、在庫が多いということは信じることができなかった。なぜなら、生産者の在庫量も、ユーザーの在庫量もどこにもデータは出ていなかったためだ。ことに自動車メーカーがどれだけ原材料を確保しているかなどという数字は秘中の秘であり、ごく一部の限られた人のみが知っていることであり、外部からは分かりようが無い情報である。それを、後輩を含めてプラチナディーラーがまことしやかに世界に在庫があると述べていた。この時から筆者はプラチナについて述べることを止めた。今回のプラチナのコメントは何年振りかである。今言えることは、プラチナ価格はまだ下がるかもしれないが、下値はそれほど大きくなく、上がる可能性はそれ以上に大きいということであり、決してプラチナ価格が上がるとは言っていない。ちなみにドイツのデグッサ社と英国のジョンソンマッセイ社は、パラジウムに換えてプラチナをガソリン車向けに利用する技術を確立したという。

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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