利下げ成就で金価格はどうなるか?

著者:近藤 雅世
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 このところの金価格上昇は米国による利下げの動きから始まっている。2015年12月以来9回にわたって利上げが続いてきたが、6月末にパウェル議長が一転して利下げをほのめかしたために株価が上昇し、金価格もなぜか上昇した。その理由は定かではないが、利上げの時に、金価格は下がった思いがあるので、利下げなら金融緩和と同じで金は上がるだろうと多くの人々が思ったためだと思われる。また利下げならドル安・金高のイメージもあるだろう。さて、昨年の利上げ時期には、利上げがあるよ、あるよと市場でささやかれ、FOMC(公開市場委員会)が近づくまでに金価格は下落し、FOMCが開催されて利上げが成就した途端に金価格は反転上昇した。このことが今回の利下げにも当てはまるなら、31日に利下げがあれば、それまで上昇していた金価格は一旦下がる可能性があるので注意されたい。

 ただ、それには様々な前提があり、利下げのニュアンス発表と同時に米国株価は過去最高値を更新して上昇している。ということは、利下げが成就すると米国株価が下落する恐れがある。少々の下落なら金価格には影響ないだろうが、大幅にあるいは世界で一斉に株価が急落するような事態になれば、金はセイフヘイブンとして株式市場から留出した資金の行き所になるかもしれない。

 そもそも利下げは、米中貿易協議も米国が追加関税を課すことを差し控えたため、6月から状況が変わっており、米国の景気はそれ程悪くはない利上げ自体が行われないかもしれない。ただ、World Gold Councilによれば、過去にCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)FEC Watchで利下げ・利上げの確率が高かった時はFRB(米連邦準備制度理事会)は史上の予測を裏切る決定はしてこなかったというレポートがある。現在のCME Fed Watchは80.6%であり、一時よりは下がったがそれでも高い確率であり、市場は利下げをほぼ既定の事実として受け止めており、FRBが利下げしなければ市場に混乱を招くだろう。

 利下げ成就は金価格にとって二つの相反する方向に行くと事前予想できるが、どちらが正しいかは来週わかる。

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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