[Vol.2016] 個人投資家の皆さまへメッセージ(2025年7月)

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。67.83ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,353.42ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年09月限は14,810元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年09月限は515.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1870.37ドル(前日比2.83ドル縮小)、円建てで9,932円(前日比30円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月18日 17時24分時点 6番限)
16,128円/g
白金 6,196円/g
ゴム 329.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「個人投資家の皆さまへメッセージ(2025年7月)」
前回は、「注目する具体的な銘柄と取引手法」として、金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマなど(2025年7月時点)を確認しました。

今回は、「個人投資家の皆さまへメッセージ(2025年7月)」として、2010年ごろに変化が生じた世界情勢の急変を示す四つのデータを、確認します。

この数回の内容を踏まえた上で、個人投資家の皆さまへのメッセージを書きます。「2010年ごろ以降」、株価指数が強い正の思惑(期待)を受けて急上昇したり、コモディティ価格が底上げしたりしています。まさに今、市場環境は激動の時代にある、と言えます。

ここで言う、激動の時代とは、世界の民主主義が後退し、世界の分断が深まる時代です。以下の図のとおり、今がこうした時代であることを裏付ける、四つのデータがあります。私たちの身近なところでも、激動の時代の一端を確認することができます。

一つ目(図の左上)は、世界のスマートフォンの販売台数です。2010年ごろに大きく増加し始めました。一つ目に関連する二つ目(図の右上)は、世界の交流サイト(SNS)ユーザーのシェアです。2010年ごろに、上昇のスピードが速くなりました。

三つ目(図の左下)は、世界のネガティブ経験指数です。2010年ごろに上昇が目立ち始めました。ネガティブ経験指数の上昇は、身体的痛み、心配、悲しみ、ストレス、怒りを感じる人が増加していることを示します。四つ目(図の右下)は先進国の子供たちの学力です。2010年ごろに数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシー、いずれも低下し始めました。

2010年ごろから、スマートフォンの普及、SNSの台頭、ネガティブ経験指数の上昇、子供たちの学力低下が、同時進行しています。特にネガティブ経験指数の上昇は、世の中が「生きることが難しくなってきた」ことを、示唆しています(断定することはできませんが、スマートフォン、SNSのマイナス面の影響が甚大であることは想像に難くありません)。

生きることが難しい激動の時代に、なぜわれわれは資産形成を行うのでしょうか。将来のお金の不安を解消するため、かもしれません。筆者はその点に、生きることが難しい時代を生き抜くため、という理由が加わると考えています。

投資活動は、俯瞰、実態、因果、時間、相殺、という思考を加速させる好機です。投資活動を行うことにより、こうした思考が加速し、思考力、判断力、表現力などの力、そして主体性、多様性、協働性という特性が大きくなると、考えられます。

つまり、投資活動は「生きることが難しい時代を生きやすくする手段」でもあるのです。ひいてはこれが、人間らしさを追求することにつながると、考えられます。生きることが難しい時代だからこそ、資産形成という投資活動をコツコツと続けることが重要です。

株式や投資信託がメインの投資家の方は多いと思います。もし余力があれば、「川上」「中立」の特徴を持つコモディティを、ポートフォリオの一部に加えていただくとよいように思います。きっと、資産形成の幅が、生きる上での考え方の幅が、広がると思います。

図:2010年ごろに変化が生じた世界情勢の急変を示す四つのデータ
図:2010年ごろに変化が生じた世界情勢の急変を示す四つのデータ
出所:各種情報源より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。