[Vol.985] 実質ゼロ、Tank to Wheelという抜け道

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。62.38ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,781.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,810元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年06月限は402.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで533.8ドル(前日比1.1ドル縮小)、円建てで1,892円(前日比22円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月27日 18時40分頃 先限)
6,199円/g 白金 4,307円/g
ゴム 238.0円/kg とうもろこし 34,860円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「実質ゼロ、Tank to Wheelという抜け道」という抜け道」

前回は、「国内外の自動車メーカーの株価と環境対策」として、本田技研工業(7267)とGeneral Motors(GM)の株価と、彼らの環境対策に注目しました。

今回は、「実質ゼロ、Tank to Wheelという抜け道」として、国内外の自動車メーカーの方針における2つの抜け道について書きます。

1992年のリオデジャネイロでの会合から、もうじき30年が経過します。この間、世界は京都議定書、パリ協定などを通じて、環境問題を議論し続けてきました。そして現在、残業、はんこ、紙、通勤など一定の無駄を省くことが進みやすいコロナ禍にあって、環境問題を悪化させる温室効果ガスという「無駄」もまた、社会から省かれるべき存在として、これまでにも増して強く認識されるようになったと感じます。

こうした中、国内外の自動車メーカーは、「野心的な目標」を掲げる上でどのようなことを重視しているのでしょうか。「持続可能な社会」という言葉を耳にするようになって久しいですが、特に資本主義的な考え方をもとに成長を実現した先進国や企業においては、そのほとんどが「持続可能=発展し続ける(儲け続ける)」という構図を描いていると考えられます。

儲け続けることと、環境に配慮することは、同じ方向を向いているのでしょうか。必ずしもそうでない国や企業もあるでしょう。また、今はむずかしくても、数十年たった時、それらが同じ方向を向いている国や企業もあるでしょう。

世界中の多くの国や企業が環境配慮を進める中で、それぞれが目標を達成する(儲けながら環境配慮を達成する)までの時間は、同一ではありません。必要なのは、目標を達成するまでの、一定の緩衝策(バッファ)だと、筆者は考えています。悪く言えば「抜け道」です。

昨今の環境問題を報じる記事のほとんどに、温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすると書かれていますが、この点は「抜け道」の一つと言えます。また、大手自動車メーカーの会見でも見られた「Tank to Wheel」という考え方もその一つです。例えば、自動車業界においては、以下のようになります。

「実質ゼロ」と「Tank to Wheel」は、温室効果ガスの排出を完全にゼロにする策ではありません。儲ける道を残す、そして一定程度、原油の消費を温存する策です。これは「抜け道」と言えると、筆者は考えています。

図:自動車における温暖化ガス削減「2つの抜け道」


出所:各種資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。