金・銀週間展望=押し目を買われる、米FRBの利下げ見通しが支援

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
             [12月18日からの1週間の展望]
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   週間高低(カッコ内は日)   2024 年 10 月限  12 月 11 日〜 12 月 15 日
        始 値   高 値    安 値    帳入値   前週末比
  金           9,418     9,443 (11)    9,216 (14)      9,285         -107
  銀           111.2     112.2 (12)    110.1 (11)      110.5         -1.7
 プラチナ       4,216     4,349 (15)    4,211 (11)      4,329         +114
 パラジウム     4,600     4,700 (15)    4,600 (14)      4,700        +100
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  NY貴金属(カッコ内は限月)      | 東京外為・株式/NY原油
        15  日終値  前週末比  |        終 値      前週末比
  金       ( 2) 2,035.7     +21.2   | ドル・円    141.89      2.01 円高
  銀       ( 3) 2,415.4     +87.8   | 日経平均  32,970.55       +662.69
 プラチナ   ( 1)   952.6     +32.8   | NY原油 ( 1)  71.43         +0.20
 パラジウム ( 3) 1,202.40   +250.80  |* ドル・円は15時15分現在、原油は 15日
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【前回のレビュー】
 金は米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待も利食い売りが圧迫要因、とした。
 金は米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退を受けて調整局面となったが、米
連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げ見通しが示されたことを受けて押し目を買わ
れた。現物相場は11月20日以来の安値1973.25ドルを付けたのち、下げ一服
となった。金先限は円高が圧迫要因となり、10月18日以来の安値9216円を付け
た。
 米雇用統計などが堅調な内容となり、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が後
退した。11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比19万9000人増と、
事前予想の18万人増を上回った。12月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は
69.4と前月の61.3から5カ月ぶりに上昇し、8月以来の高水準となった。11
月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.1%上昇し、前月の3.2%から伸びが
鈍化し、事前予想と一致した。CMEのフェドウォッチで、米連邦準備理事会(FR
B)の利下げ開始時期の見通しは来年3月から5月に後退した。一方、米連邦公開市場
委員会(FOMC)で当局者が来年3回の利下げ見通しを示すと、利下げ期待が再び高
まった。19人の政策担当者のうち17人が2024年末には政策金利が現在よりも低
下するとの予想を示した。ただパウエル米FRB議長は会合後の記者会見で、予測はあ
らかじめ決められた計画ではないと強調した。11月の米小売売上高は前月比0.3%
増と事前予想の0.1%減から予想外に増加しており、今後発表される経済指標を確認
したい。
 欧州中央銀行(ECB)理事会で、政策金利の据え置きを決定した。据え置きは2会
合連続。ラガルドECB総裁は、インフレは近く回復するとし、物価圧力は依然として
強いと強調し、利下げ観測を押し戻した。利下げは来年3月ではなく4月から始まり、
計1.50%ポイント引き下げられるとの見方が織り込まれた。またイングランド銀行
も政策金利を15年ぶり高水準となる5.25%に据え置き、金利が「長期にわたり」
高止まりする必要があるとの認識を改めて示した。利下げが議論されることはなく、イ
ンフレが米国やユーロ圏よりも粘着性が高い可能性を引き続き懸念した。米連邦準備理
事会(FRB)のハト派姿勢と対照的でドル安が続くと、金の支援要因になりそうだ。
【金ETF残高は減少】
 世界12カ国に上場している金ETF(上場投信)の現物保有高は14日時点で
1075.66トンとなり、前週末比2.88トン減少した。米連邦準備理事会(FR
B)の利下げ観測の後退を受けて米国で減少したが、米連邦公開市場委員会(FOM
C)で利下げ見通しが示されると、買い直された。一方、米商品先物取引委員会(CF
TC)の建玉明細報告によると、12月5日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い
越しは20万3544枚となり、前週の20万0084枚から拡大した。今回は手じま
い売りが1005枚、買い戻しが4465枚入り、3460枚買い越し幅を拡大した。
 米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しを受けてドル安に振れるなか、円相場は
1ドル=140.90円と7月31日以来の円高水準となった。日銀のマイナス金利解
除の思惑も円を買い戻す要因であり、18〜19日の日銀金融政策決定会合も当面の焦
点である。植田日銀総裁は、マイナス金利解除で政策金利をゼロ%にするかプラス圏の
金利にするか、どの程度のスピードで利上げしていくかは「その時の経済・金融情勢次
第」と述べている。12月の日銀短観で大企業・製造業の業況判断指数(DI)は9月
調査から3ポイント上昇してプラス12となり、3四半期連続で改善した。価格転嫁が
進展し、企業業績を押し上げたが、人手不足は深刻化しており、賃上げの行方が今後の
焦点である。
【銀は米FOMCをきっかけに買われる】
 銀の現物相場は、11月14日以来の安値22.50ドルを付けたのち、下げ一服と
なった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退が圧迫要因になったが、米連邦
公開市場委員会(FOMC)で利下げ見通しが示されたことを受けて買い戻された。た
だ中国の中央経済工作会議では産業政策が重視され、住宅部門の救済策は示されなかっ
たことから、新たな景気刺激策を期待していた投資家の失望を招いたことが上値を抑え
る要因である。中国経済の行方も確認したい。
 14日のニーヨークの銀ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比209.35ト
ン増の1万3731.26トンとなった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の
建玉明細報告によると、12月5日時点のニューヨーク銀の大口投機家の買い越しは
3万6303枚となり、前週の3万4280枚から拡大した。新規買い、買い戻しが入
った。
当面の予定(イベント・経済統計)
18日 金融政策決定会合(日本銀行、19日まで)
    独景況感指数 2023年12月(ifo)
19日 総裁記者会見(日本銀行)
    ユーロ圏消費者物価指数 2023年11月確報(EUROSTAT)
    米住宅着工・許可件数 2023年11月(商務省)
20日 貿易収支 2023年11月速報(財務省)
    独生産者物価指数 2023年11月(連邦統計庁)
    英消費者物価指数 2023年11月(国立統計局)
    ユーロ圏国際収支 2023年10月(ECB)
    米経常収支 2023年7-9月期(商務省)
    米消費者信頼感指数 2023年12月(カンファレンスボード)
    米中古住宅販売統計 2023年11月(全米不動産協会)
21日 米国内総生産 2023年7-9月期確報値(商務省)
    米新規失業保険申請件数(労働省)
    米製造業景況指数 2023年12月(フィラデルフィア連銀)
22日 消費者物価指数 2023年11月(総務省)
    金融政策決定会合議事要旨公表 10月30-31日分(日本銀行)
    英国内総生産 確報値 2023年7-9月期(国立統計局)
    英小売売上高 2023年11月(国立統計局)
    米個人所得・支出 2023年11月(商務省)
    米耐久財受注 2023年11月速報値(商務省)
    米新築住宅販売 2023年11月(商務省)
    米消費者信頼感指数 2023年12月確報値(ミシガン大)
    建玉明細報告(CFTC)
MINKABU PRESS 東海林勇行
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