コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【米2月消費者物価指数を受けてもNY金の底意は強い】
 NY金4月限は今月の取引を2052.8ドルで開始したが、その後は上値を探る足
取りを維持し今月8日に2203ドルと一代高値を更新した。ただ6営業日で約150
ドルの上昇を記録したことで高値警戒感が強まり、9日から反落となり、12日は一時
2156.2ドルまで値を落とす動きが見られた。
 12日の大幅安のきっかけとなったのは2月の米消費者物価(CPI)だ。米国のイ
ンフレ率が米連邦準備理事会(FRB)が目標としている2.0%に向かう動きが継続
しているかどうか、米国の雇用情勢を反映しているとされる食品・エネルギー価格を除
いたコアCPIの動向などが注目された。総合CPIの前年同月比は前月に記録した+
3.1%を上回る+3.2%だったが、コアCPIの前年同月比は前月の+3.9%を
下回る+3.8%となっている。
 前月に引き続き3%台での推移となったことで、コアCPIは前年同月比も前月を下
回ったとはいえ、依然として3%台後半を維持していることでFRBが目標とする2%
への道のりの不透明感さが意識されたことはNY金市場の弱材料となり、それまでの急
騰の反動もあって12日の大幅反落に繋がった。
 CPIに加え金価格の上昇一服感を強めた要因として挙げられるのが投機筋を含む大
口投機家だ。米国商品先物取引委員会(CFTC)の発表の建玉明細によると2月27
日時点で14万枚程度だった大口投機家の買い越し枚数は3月5日は19万1293枚
まで一気に膨らんでいたことが明らかになっているからだ。
 NY金市場では昨年12月に24年早期利下げ着手期待が高まり金価格が急伸し、一
代高値を付ける場面が見られたが、ファンド筋を含む大口投機家の買い越し玉は20万
枚程度だった。その後、FRBの金融緩和の方向性が高まりながらも市場の思惑と実際
の利下げ着手の時期のズレに対する意識が高まり、これが調整を呼ぶなかファンド筋を
含む大口投機家の持ち玉調整も進み、その結果買い越し数が大きく減少した。それが2
月末から3月上旬にかけてファンド筋を含む大口投機家の買い越し数が5万枚程度増加
していたことは、ファンド筋を含む大口投機家の買いが一気に膨らんだ様子を窺わせて
いる。
 すでにファンド筋を含む大口投機家の買い越し数は12月急伸時の水準に達している
ため、これ以上の買い進みは慎重視される可能性が高まっている。また、すでにパウエ
ル連邦準備理事会(FRB)議長の議会発言などを受けて年内の米利下げ着手は織り込
んでおり、現時点で注目されているのはその着手の時期と年内の利下げ回数と次の段階
に移っているだけに、金価格を更に押し上げる手掛かりに欠けるのが現状と言える。
 その一方で材料の織り込みにより金の地合いが本格的に軟化する可能性も低い。とい
うのも、やはり年内の利下げ着手が有力視されているからだ。また、利下げ着手の時期
が今年後半になったとしても、目先は失望売りが見られたとしても、高金利の長期化は
米財政悪化や米地銀の経営悪化を招くとの懸念を高めるリスクが高いことは、NY金市
場における下支え要因になるだろう。
 さらに、米国の度重なる利上げによる金利の上昇やドル高を受けて世界の中央銀行が
外貨準備の価値を維持するために金に対し旺盛な需要を見せていることも金市場の底堅
い足取りを意識させる。また、インフレヘッジとしての役割から、これまでの物価高に
対応するための金買いの動きも金価格の下支え要因になっていると見られる。
 NY金4月限は目先の買い一巡感が強まりながらも13日の取引では買い戻されるな
ど、押し目買いの強さも窺わせているだけに、目先は2150ドルを下値支持線にして
の高下が続くことになりそうだ。
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