【来週の注目材料】トランプ大統領発言に加え、米指標にも注目 トランプ大統領や関係閣僚発言、中銀関係者発言などに一喜一憂する展開が続いています。 今週も同様の展開が続く可能性が高いですが、先週土曜日から米連邦公開市場委員会(FOMC)までのブラックアウト期間に入っており、FRB関係者発言が基本的には出てきませんので、発言を受けての動きについては、少しマシになる可能性が高いです。ただ、トランプ大統領の発言に市場が神経をとがらせている状況は変わらずです。今週は29日に大統領就任100日記念集会がミシガン州で開催され、演説を行う予定となっており、注目を集めそうです。 トランプ大統領は25日、日本との貿易交渉は非常に順調に進んでおり、合意に非常に近づいていると発言しています。実際どのような合意になるのかなどが未知数ですが、交渉進展をアピールするためにも、何らかの動きが見られる可能性があり、注意したいところです。赤沢再生相が訪米し1日にベッセント米財務長官と二度目の交渉を行う予定などもあります。 今週は米重要指標の発表が並んでおり、こちらも注目です。 主なところでは29日の3月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、4月コンファレンスボード消費者信頼感指数、30日の第1四半期GDP速報値、3月PCE価格指数、4月ADP雇用者数、1日の4月ISM製造業景気指数、2日の4月米雇用統計が挙げられます。 なかでも第1四半期GDP速報値と米雇用統計の注目度が高いです。 第1四半期GDP速報値は前期比年率+0.4%と昨年第4四半期の+2.4%から一気の鈍化見込みとなっています。個人消費が+4.0%から+1.2%に落ち込む見通しとなっており、全体を押し下げそうです。もっとも大きな理由は寒波で、元々ある程度の鈍化が見込まれていました。ただ、トランプ関税による影響がある程度入っているとみられ、消費の押し下げにつながった可能性があります。トランプ関税への警戒が強まる前は、寒波の影響で前期からは落ち込みが見込まれるとはいえ、もう少し強めの数字が期待されていました。2月に入って対中関税が引き上げられ、その後関税率がさらにアップしています。iPhoneなどの電子機器は現状対象外ですが、中国から米国への輸出品は多岐に渡っており、例えばおもちゃ・ゲーム・スポーツ用品だけでも年間約300億ドル(2023年国連コムトレードデータ)の輸出があります。こうした輸出品は関税対象として値段が引き上げられており、消費の減退につながっています。こうした影響が予想以上に大きく出てくるようだと、トランプ関税への警戒感につながり、ドル売り円買いの材料となる可能性があります。 もう一つの注目が4月の米雇用統計です。 前回3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+22.7万人と、2月の+11.7万人から一気に伸び、市場予想の+13.7万人も大きく超えてきました。失業率は4.2%と2月及び市場予想の4.1%から悪化しましたが、労働参加率が上昇していること(労働参加率が上昇すると失業率は一時的に悪化することが多いです)や、正社員雇用を望みながら非正規雇用に甘んじている人などを含めた広義の失業率(U6失業率)が2月から0.1%低下して7.9%となったことなどから、問題視はされませんでした。 NFPの内訳をみると、製造業が+0.1万人と小幅ながら二カ月連続のプラス圏、建設業が+1.3万人となって、その他を含めた財部門全体では+1.2万人。2月の+2.6万人から増加幅は縮小もしっかり伸びています。予想を超える伸びとなった原因はサービス部門で、ヘルスケアを中心とした教育・医療部門が+7.7万人と2月の+6.0万人を超え、好調さを維持しました。レストラン部門を中心とした娯楽・接客業が+4.3万人、小売業が+2.4万人、運輸・倉庫業が+2.3万人となっています。これらの部門は雇用の流動性が高く、景気動向にも敏感な部門だけに好印象となりました。なお、トランプ政権により連邦政府の職員削減が進んでいますが、3月の数字としては-0.4万人に留まっています。雇用統計の規定上、退職金を継続的に受け取っている人は雇用者扱いになりますので、その影響がありそうです。 こうした状況を受けて今回4月分の雇用統計ですが、市場予想は+13万人と一気に伸びの鈍化が見込まれています。1月の+11.1万人、2月の+11.7万人などの流れに戻るだけという面はありますが、やや厳しい伸びという印象です。かなり強かった前回ですが、小売業は大手スーパーであるクローガーのストライキが解消したことによる増加分があったとみられています。運輸・倉庫業の雇用増はトランプ関税前の駆け込み需要への対応という面が指摘されています。こうした特殊事情の影響が減少することで、1月、2月などの状況に近づくという見方です。 先行き不透明感の強い中、トランプ大統領などの発言への警戒感が強いだけに、指標結果にはやや反応が鈍くなっており、市場予想前後での数字であれば、水準自体は弱いとはいえ影響は抑えられると見込まれます。ただ予想を超えて悪化が見られると警戒感からのドル売り円買いが進む可能性が高いだけに要注意です。 MINKABUPRESS 山岡
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