サウジの孤軍奮闘=OPECの足並みの乱れ

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)横ばい。週間石油統計における強材料(米原油在庫減少)、弱材料(米原油生産量増加)など、強弱の材料が交錯したことなどで。57.81ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの上昇一服感などで。1419.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)下落。9月限は10565元/トン近辺で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。9月限は442.9元/バレル近辺で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで560.8ドル(前日比1.9ドル拡大)、円建てで1919円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(8月1日19時頃 先限)
 4918円/g 白金 2999円/g 原油 40320円/kl
ゴム 172.5円/kg とうもろこし 24060円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジの孤軍奮闘=OPECの足並みの乱れ」

今回は「サウジの孤軍奮闘=OPECの足並みの乱れ」として、日本時間の本日、海外主要メディアが公表したイランを含んだOPECの原油生産量について書きます。

以下のグラフは、本日公表された7月の原油生産量のデータと、現在のルールでの減産がスタートした2019年1月を比較したものです。

OPEC全体としては7月、1月に比べて日量156万バレル減少しました。そして、そのOPECの全体の減少量のうち、日量75万バレル(48.1%)が、減産参加国によるものでした。

減産の責を負っている減産参加国に比べて、減産に参加していない減産免除国の方が、OPEC全体の生産減少に貢献しているわけです。

また、減産参加国による日量75万バレルの減少のうち、79.8%にあたる日量60万バレルがサウジ1国によるものでした。

サウジ以外の減産参加国10カ国(イラク、クウェート、UAE、ナイジェリア、アルジェリア、赤道ギニア、コンゴ共和国、アンゴラ、ガボン、エクアドル)の減少幅の合計は日量15万バレル(日量75万バレルの20.2%)でした。

OPEC全体としては、日量156万バレルの減少のうち、38.4%にあたる日量60万バレルをサウジ1国で賄っています。

減産はサウジ1国頼み、サウジが孤軍奮闘、という状況にあります。

OPEC加盟国の中では、2年半以上という長きに渡り、減産を継続しているため、“そろそろ増産をしたい”という思惑が芽生え始めている可能性もあります。

そのように考えれば、今後、時間の経過と共に減産をしなければならい国で削減量が減少、あるいは増産が目立ち、同時に、サウジ1国頼みの状態がより目立つようになると考えられます。

OPEC全体の原油生産量が減少しているため、一見すると減産が上手くいっているように見えがちですが、決してOPECは一枚岩ではないことに注意が必要です。

図:OPEC全体および減産参加国・免除国の原油生産量の比較(2019年1月-7月)単位:千バレル/日量


出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。