[Vol.1038] ドル金利は足元、低下傾向

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。72.27ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,828.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,370元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年09月限は444.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで689.95ドル(前日比6.95ドル縮小)、円建てで2,442円(前日比11円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月15日 19時17分頃 先限)
6,467円/g 白金 4,025円/g
ゴム 213.1円/kg とうもろこし 35,280円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ドル金利は足元、低下傾向」

前回は、「金相場、大台回復シナリオを支える4要素」として、足元の金相場の反発とその背景を考慮した、1,900ドル、あるいは2,000ドルといった大台に再び達するシナリオについて、踏み込んで考えました。

今回は、「ドル金利は足元、低下傾向」として、前回述べた、大台に再び達するシナリオを描く上で必要と考える4つの要素の1つである、「ドル金利の低下傾向が続く」について、書きます。

4つの要素とは、「1.各種不安が大きくなる」「2.ドル金利の低下傾向が続く」「3.暗号資産への懸念が大きくなる」「4.金融緩和時は、株高が続いても問題ない」です。

以下のグラフの通り、6月16日(水)のパウエル議長の会見直後に急上昇した米2年債と米5年債の利回りが、今月に入り、大きく低下しています。

7月9日(金)時点で、米2年債利回りは急上昇分の半分が低下、米5年債利回りは急上昇分のほとんどが低下、米10年と30年債に至っては会見直前をも下回る、今年の2月中旬ごろの水準まで低下しています。

このような動きを考えれば、あのパウエル議長の会見は、広範囲に強い思惑(懸念や期待)を振りまいたことは確かですが、今のところ、市場の値動きに大きな影響を与える要因にはなっていないと言えそうです。

今後、FOMC(米連邦公開市場委員会)(年内は7月、9月、11月、12月)やジャクソンホールシンポジウム(8月26日~28日)などで、再びテーパリングの議論が噴出し、テーパータントラムが強まる可能性はあるものの、これらの会合が6月のあの会見を踏襲するサプライズ感のない会合となった場合は、米国債利回りの低下傾向は続くとみられます。

同時に、ECB(欧州中央銀行)が引締め的な措置を開始することを示唆するなどして、ユーロに上昇圧力がかかれば、対ユーロの側面からドルに下落圧力がかかる可能性もあります。

これらの点から今後も、ドル金利の低下傾向およびドル下落観測による「代替通貨」起因の上昇圧力が、金(ゴールド)市場にかかり続ける可能性があると、筆者は考えています。次回以降、3つ目の要素「暗号資産への懸念が大きくなる」について述べます。

図:米国債利回りの推移 (2021年6月15日を100として指数化)


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。