[Vol.2004] 「ドル離れ・金(ゴールド)寄り」の傾向

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反落などで。65.86ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反落などで。3,348.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年09月限は14,125元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年08月限は498.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1957.6ドル(前日比33.50ドル縮小)、円建てで9,584円(前日比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月2日 18時03分時点 6番限)
15,576円/g
白金 5,992円/g
ゴム 312.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,024円/mmBtu(25年9月限 6月24日15時01分時点)

●NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『ドル離れ・金(ゴールド)寄り』の傾向」
前回は、「金(ゴールド)市場の二種類の『クジラ』」として、金(ゴールド)市場における、二種類の「クジラ」に関する筆者の考えを確認しました。

今回は、「『ドル離れ・金(ゴールド)寄り』の傾向」として、中央銀行全体の外貨準備高の構成(2019~2024年)を確認します。

以下は、中央銀行が保有する外貨準備高の通貨別の比率(世界合計)です。2019年以降、米ドルは大きく低下(54%→43%)、ユーロはやや低下(17%→15%)、金(ゴールド)は大きく上昇(13%→19%)、人民元は横ばい(2%→2%)、その他の通貨は大きく上昇(14%→21%)しました。

中央銀行が金(ゴールド)の保有量を増減する動機については、毎年の「中央銀行調査」の回答結果に示されています。

世界的な金(ゴールド)の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、2018年から「中央銀行調査」を実施しています。調査項目をWGCが作成し、YouGov(ユーガブ。英国に拠点を置く世界規模の調査機関。米大統領選挙など国を挙げた選挙などの際に世論調査を手掛けることもある)の協力のもとで実施しています。

英語版の調査フォームをアラビア語、フランス語、スペイン語に翻訳し、世界中の中央銀行が回答できるようにしています。2025年の調査は2月25日から5月20日に行われ、73カ国の中央銀行から回答が得られました(回答率は49%。制裁下にある国へは回答を呼び掛けなかった)。

また、全ての質問において、回答は任意でした。回答結果は、全体、先進国、新興国に分けて示されており、先進国、新興国の分類は国際通貨基金(IMF)の定義に基づいています。

中央銀行が金(ゴールド)の保有量を増減する動機を問う質問では、危機時のパフォーマンス、長期的な価値保全、インフレ・ヘッジ、効果的なポートフォリオの構築、地政学的リスクに対する分散策、デフォルト・リスクなし、歴史的ポジション、などが多く選択されました。

特に先進国の中央銀行は歴史的ポジション、新興国の中央銀行は危機時のパフォーマンスを選択する傾向が見られました。また、先進国の中央銀行はほとんど選択しなかったものの、新興国の中央銀行のいくつかは、国際通貨システムの変化の予期、制裁への懸念、金(ゴールド)に対する国民の意識、などを選択しました。

ここで示した二つのグラフより、近年の中央銀行は全体として、外貨準備高を管理する上で、「ドル離れ・金(ゴールド)寄り」の姿勢を鮮明にしていると言えます。

図:中央銀行全体の外貨準備高の構成(2019~2024年)
図:中央銀行全体の外貨準備高の構成(2019~2024年)
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。