[Vol.1039] 暗号資産の懸念拡大は金の上昇要因

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.93ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,823.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,570元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年09月限は438.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで690.95ドル(前日比0.35ドル縮小)、円建てで2,450円(前日比0円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月16日 19時14分頃 先限)
6,452円/g 白金 4,002円/g
ゴム 217.2円/kg とうもろこし 34,500円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「暗号資産の懸念拡大は金の上昇要因」

前回は、「ドル金利は足元、低下傾向」として、前回述べた、大台に再び達するシナリオを描く上で必要と考える4つの要素の1つである、「ドル金利の低下傾向が続く」について、書きました。

今回は、「暗号資産の懸念拡大は金の上昇要因」として、前回まで述べた、大台に再び達するシナリオを描く上で必要と考える4つの要素の1つである、「暗号資産への懸念が大きくなる」について、書きます。

主要な暗号資産である「ビットコイン」「イーサリアム」「リップル」の値動きに注目します。暗号資産は、「無国籍通貨(国の信用の裏付けなしで存在できる通貨)」という、金(ゴールド)との共通点があります。

ドルに先安観や金利低下観測が浮上し、ドルの代わりの通貨、つまり「代替通貨」を求める動きが強まった時、国の信用の裏付けなしで存在できる「無国籍通貨」の金(ゴールド)やビットコインが物色されることがあります。

金(ゴールド)と暗号資産は「代替通貨」という分野で競合すると考えられるため、「代替通貨」の需要増加時、暗号資産が何らかの要因で資金流入が起きにくい事態が発生した場合、金への資金流入が加速することが想定されます。

金(ゴールド)相場の反発が目立っている今、以下のグラフのとおり、ビットコインを含む主要な暗号資産の価格は、以前の急騰・急落が?のように、穏やかな横ばいで推移しています。

一部の財政難に陥っている国を除き、主要国では程度の差はあれ、暗号資産を規制する方向で一致していることが主な要因とみられます。また、かつて「マスク相場」とやゆされた、米電気自動車大手テスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏の影響力が低下しているとみられることも一因とみられます。

暗号資産が小動きであることは、「代替通貨」で競合する金(ゴールド)の立ち位置を、相対的に向上させる要因になると考えられます。

目先、引き続き、暗号資産が小動きで、かつ「代替通貨」の需要が継続して存在すれば、金相場に上昇圧力がかかる可能性があると、筆者はみています。

次回以降、4つ目の要素「金融緩和時は、株高が続いても問題ない」について述べます。

図:主要暗号資産価格の推移 (2021年7月9日を100として指数化)


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。