なぜ、サウジは孤軍奮闘するのか?

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。54.95ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1448.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)下落。9月限は10340元/トン近辺で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)下落。9月限は428.4元/バレル近辺で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで600.4ドル(前日比19.3ドル拡大)、円建てで2015円(前日比35円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(8月2日18時30分頃 先限)
 4923円/g 白金 2908円/g 原油 37720円/kl
ゴム 169.0円/kg とうもろこし 23700円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「なぜ、サウジは孤軍奮闘するのか?」

今回は「なぜ、サウジは孤軍奮闘するのか?」として、孤軍奮闘中のサウジの原油生産量について書きます。

海外主要メディアのデータによれば、サウジの7月の原油生産量は日量およそ965万バレルでした。この水準は、2017年1月の協調減産開始以降、最低です。

減産は自らの収益の柱である原油の生産・輸出を自ら減少させる、いわば身を切る行為だと言え、2019年7月、サウジは協調減産開始以降、最も身を切ったと言えます。

原油の減産は原油価格を上昇させる要因になると言われますが、現在は米中貿易戦争の激化という非常に思い下落要因があることもあり、減産を実施しているとは言え、OPECプラスが目論むような原油価格の上昇は見られません。

原油価格の上昇という恩恵がないない中での減産は、単なる身を切る行為になってしまいます。

そのような中、なぜサウジは孤軍奮闘をするのでしょうか?

サウジは現在、軍事費が肥大化する中、国内の施策にかかるお金をねん出しなければならない状態にあります。

また、サウジアラムコの企業価値を高めて将来、IPO実施を実現させなければなりません。

つまり、国の運営のために原油価格の上昇が必要であり、そのために減産に励んでいるとみられます。

また、OPECのリーダーとして減産を率先して行うことが求められ、そしてリーダーであるが故、減産するべきであるにも関わらず減産をしない国の肩代わりをしなければなりません。

つまり、OPECプラスという枠組みを守らるという使命が課せられているため、減産を実施しているとみられます。

サウジは内外、双方の理由から、減産を実施しなければならない状況にあると言えます。

減産は2020年3月まで続きますが、今後、これまでの2年半を超える減産実施に疲れ、増産をする国が目立つ可能性があります。

今後も、サウジ、そしてサウジ以外の減産参加国の原油生産量の推移に注目したいと思います。

図:サウジの原油生産量 単位:百万バレル/日量


出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。