[Vol.1052] 代表的なコモディティ指数に注目

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。67.86ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,731.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は14,910元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年09月限は424.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで754.7ドル(前日比0.9ドル縮小)、円建てで2,637円(前日比0円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月10日 18時11分頃 先限)
6,147円/g 白金 3,510円/g
ゴム 222.0円/kg とうもろこし 34,090円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「代表的なコモディティ指数に注目」

前回は、「金(ゴールド)の変動要因も多様化した」として、1971年のニクソンショック後、金市場が自由化の道を歩み始め、投資手法が多様化したことに加え、金市場を動かす変動要因が多様化した経緯について書きました。

今回より数回に分けて、コモディティだけで完結する分散投資をテーマについて書きます。今回は「代表的なコモディティ指数に注目」とし、複数のコモディティの個別銘柄の値動きを一つにまとめたコモディティ指数の代表格である「CRB指数」について述べます。

「金(ゴールド)は、資産の10%程度、持ちましょう」と、しばしば耳にします。株式などの資産を保有している人が、どの程度の割合で金を保有するべきか、という問いへの回答です。この10数年間、筆者が各所で耳にしてきたこの問いへの回答は、おおむね「10%」で変わっていません。

その時の金(ゴールド)市場を取り巻く環境や、その人がどのような株式を保有しているかなど、条件はさまざまです。このため、どの程度金を保有するのが妥当かという問いに対し、万人に通じる一つの答えを導き出すことは難しいと筆者は感じています。

この議論は、割合が50%や80%ではなく、(おおむねいつも)10%であることを考えれば、金(ゴールド)が、資産全体のわき役である(メインにはなり得ない)、ことを伝えているのだと思います。

「その人、その時に合った、金(ゴールド)の保有比率」については、また別に議論をすることとし、あえて、コモディティだけで完結する分散投資を考えます。

以下のグラフは、複数の国際商品の値動きを一つにまとめた代表的な指数、リフィニティブ・コアコモディティーCRB指数(以下CRB指数)の推移です。リフィニティブの資料によれば、2020年4月時点で農産物、エネルギー、金属など合計19銘柄の値動きが考慮されています。

足元、約6年ぶりの水準まで上昇しています。2000年以降の目立った上昇の背景を確認すると、新興国の台頭、リーマンショック後の世界的な大規模な金融緩和(米国では2009年から2014年まで3度にわたり断続的に行われた)、新型コロナの感染拡大によって負ったダメージを回復させるべく行われている現在の金融緩和などが挙げられます。

下落時の背景には、リーマンショック、バーナンキショック、逆オイルショック、新型コロナショックなど、数々の「ショック」が冠された、株式やコモディティ市場で発生した広範囲の下落劇が挙げられます。各種「ショック」が発生した背景は、以下のとおりです。

・リーマンショック: 2008年9月、米国で信用格付けが低い人向けのローンの回収が行き詰まり、大手金融機関(リーマンブラザーズ)が破綻したことをきっかけに発生。
・バーナンキショック:2013年5月、当時のFRB議長だったバーナンキ氏が金融緩和を終了させることを明言し、それを各種市場が悲観的に受け止めたことで発生。
・逆オイルショック:2014年12月、原油相場が下落する最中、OPEC(石油輸出国機構)が原油の減産を実施せず、原油相場の下落に拍車がかかったことで発生。
・新型コロナショック: 2020年3月、WHO(世界保健機関)が、新型コロナが世界的な大流行(パンデミック)となったと宣言したことで発生。

CRB指数は、足元、こうした紆余曲折を経て、6年ぶりの高値水準で推移しています。

図:CRB指数の動き


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。