[Vol.1052] 金(ゴールド)の変動要因も多様化した

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。69.39ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,803.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,850元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年09月限は430.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで802.25ドル(前日比7.9ドル縮小)、円建てで2,802円(前日比14円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月6日 14時52分頃 先限)
6,354円/g 白金 3,552円/g
ゴム 219.5円/kg とうもろこし 34,220円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)の変動要因も多様化した」

前回は、「金市場の自由化後、投資手法の多様化が進行」として、1971年のニクソンショック後、金市場が自由化の道を歩み始め、投資手法が多様化した経緯について書きました。

今回は、「金(ゴールド)の変動要因も多様化した」として、1971年のニクソンショック後、金市場が自由化の道を歩み始め、投資手法が多様化したことに加え、金市場を動かす変動要因が多様化したことについて述べます。

近年、投資手法以外にもう一つ、金(ゴールド)市場で多様化が進んでいる分野があります。「変動要因」です。「有事と言えば金高」、「株安と言えば金高」などと、材料を点でとらえる旧態依然の考え方では、現代の金相場を正しく分析することはできません。以下は筆者がイメージする金市場を取り巻く6つのテーマです。

(1)有事のムード(資金の逃避先需要)
(2)代替資産(株の代わり)
(3)代替通貨(ドルの代わり)
以上、短中期的な価格動向に強く影響するテーマ。

(4)中国・インドの宝飾需要
(5)中央銀行の金保有
(6)鉱山会社の動向
以上、中長期的な価格動向に強く影響するテーマ。

以前の「五輪は多様性を紡ぐことの重要性を教えてくれている」で述べた通り、現代の金(ゴールド)市場を分析するためには、金市場に関わる上記の6つのテーマを俯瞰する、換言すれば、「同時に尊重する」ことが非常に重要です。

足元、新型コロナのデルタ株の感染拡大が起きていることで、世界的に不安拡大が起きており、(1)有事のムードが拡大(資金の逃避先需要が増加)傾向にあると、考えられます。

また、年初に急上昇したドル金利(米10年債利回り)が低下傾向にあることや、ビットコインなどの暗号資産価格が一時の高値から反落していることなどから、(3)の代替通貨の需要が増加傾向にあると考えられます。

目先、株価が上昇して(2)の代替資産の側面で下落圧力がかかったとしても、上述のとおり(1)および(3)をきっかけとする上昇圧力がかかれば、金(ゴールド)価格は上昇する可能性があると、筆者は考えています。

また、6つのテーマの時間的な影響力のイメージは以下です。短中期的な価格動向に強く影響するテーマと、中長期的な価格動向に強く影響するテーマを混同しないことが、現代の金相場を分析する上で、非常に重要であると筆者は考えています。

図:6つのテーマが与える金市場への影響(イメージ)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。