[Vol.1053] 原油が下落しても、CRB指数が上昇する場合がある

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,733.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は14,795元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年09月限は428.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで735.9ドル(前日比5.45ドル縮小)、円建てで2,588円(前日比49円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月11日 13時55分頃 先限)
6,172円/g 白金 3,584円/g
ゴム 222.4円/kg とうもろこし 34,450円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油が下落しても、CRB指数が上昇する場合がある」

前回より数回に分けて、コモディティだけで完結する分散投資をテーマについて書いています。前回は「代表的なコモディティ指数に注目」とし、複数のコモディティの個別銘柄の値動きを一つにまとめたコモディティ指数の代表格である「CRB指数」について述べました。

今回は「原油が下落しても、CRB指数が上昇する場合がある」とし、前回述べた「CRB指数」の構成比率について述べます。

「米国金融緩和縮小観測」「デルタ株拡大」「中国景気回復鈍化懸念」などの複数の悲観論がある中にあっても、前回の通り、CRB指数は6年ぶりの高値水準で推移しています。主力の原油が下落している中で、CRB指数が上昇している理由を、指数の構成比率で確認することができます。

構成比率が異なるため、単純に比較することはできませんが、以下の資料の通り、原油の下落分の一部を天然ガスの上昇分が相殺し(エネルギーの分野)、トウモロコシの下落分の一部を小麦の上昇分が相殺し(穀物)、赤身豚肉の下落分をコーヒーとオレンジジュースの上昇分が相殺し(その他農産物)、銀の下落分を金の上昇分が相殺(貴金属)しています。(騰落率は2021年6月17日と8月4日の終値で計算)

CRB指数が上昇している背景には、各分野において下落分を相殺する要素があったこと、そして、非鉄金属の分野では3銘柄(構成比率合計13%)がいずれも上昇したことが挙げられます。

構成比率だけを見ると、個別銘柄では原油が23%、分野別ではエネルギーが4銘柄合計で39%であるなど、エネルギーに偏りがあるため、CRB指数はエネルギーの価格動向に連動するイメージを抱く人もいるかもしれませんが、実際は、原油価格が下落しても、CRB指数は上昇することがあるのです。

図:CRB指数の構成比率と各銘柄の騰落率(構成比率は2020年4月時点) 騰落率は2021年6月17日と8月4日の終値で計算


出所:リフィニティブの資料、ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。