[Vol.1057] 金(ゴールド)を手元に置く理由[1]

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。66.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,795.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,915元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年10月限は419.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで775.45ドル(前日比6.75ドル拡大)、円建てで2,709円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月17日 17時29分頃 先限)
6,299円/g 白金 3,590円/g
ゴム 224.3円/kg とうもろこし(まだ出来ず)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)を手元に置く理由[1]」

前回は「貴金属ごとに用途が異なる点に注目」として、金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウムの4つの貴金属銘柄の用途の差に注目しました。

今回は「金(ゴールド)を手元に置く理由[1]」として、筆者が考える、金地金(ゴールドバー)を手元に置く理由の一つについて述べます。

金(ゴールド)は、数千年間、人類とともに存在してきました。古代エジプトや日本の古墳時代には、その魅惑の輝きを放つ物質は権力の象徴でした。また、物々交換の時代が終焉(しゅうえん)する方向に進み始めたのは、人類が金(ゴールド)にお金の機能をあたえたことがきっかけでした。

そんな歴史を持つ金(ゴールド)ですが、はじめて1キロバーの金(スマートフォンくらいの大きさ)を手のひらに乗せた現代人が真っ先に口にするのは、「見た目以上に重い」「えー!? こんなに重いの?」などの重さに関する感想です。

これは、1キロバーを展示した当社のイベントで、筆者が実際に何度も耳にしたお客様の声です。その重さに人類の脳は錯覚を起こすのです(筆者もはじめはそうでした)。

(筆者の個人的な感覚ですが)金(ゴールド)を手のひらに置いた時、魅惑の輝きに魅了されながら、権力や財力が増した感覚がふつふつと湧いてきて、同時に安心や安定感が広がり、不思議な感覚につつまれます。

まるで人の感覚が、金(ゴールド)を手のひらに置くとそうなるように設計されているかのように、です。

本物の重さと輝きをじかに体験してしまうと、人類は金(ゴールド)の前になすすべがないのかもしれません。人類がこの物質に価値があり、お金だと認めたのもうなずけます。

また、金(ゴールド)は地球上に五輪プール2杯分しかない、優れた電導性や伸縮性があり電子製品にも使われている、多数の中央銀行が大量に金を保有しているなどの追加の知識が加わると、金の世界への没入感がさらに増します。

いつの時代も、金(ゴールド)を手元に置きたいというニーズは、一定程度、存在します。金が魅惑的な輝きを放ったり、類まれな特性を持っていたり、得(え)も言われぬ安心感をもたらしてくれたりすることがその動機とみられます。

このような感覚的上の動機に加え、個人的には、人類のDNAに金(ゴールド)に「じかに」触れた時、虜(とりこ)になるよう、情報が刻み込まれているからだと、考えることすらあります。

保管の仕方、盗難防止策の講じ方など、考えるべき点はありますが、手元に置くことは、人類にとって意味のある行為であると言えると思います。

こうした点に加え、もう一つ、金(ゴールド)を手元に置く意味があります。この点を述べる上で、そもそも誰のために資産運用を行っているのか? そして、今後の日本がどうなりそうか? について考える必要があります。次回以降、複数回に分け、こうした点について書きます。

図:その運用、だれのため?


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。