トランプ政権の対中強硬策と金原油価格

著者:近藤 雅世
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 最近の金価格や原油価格は、トランプ大統領の発言によって動いている。9月1日に中国の製品3000億ドル相当に対して10%の関税を課すと言ってみたり、中国が譲歩するなら課税措置を引き下げることもあると言ってみたり、25%の関税を課すと言ってみたり、その都度金価格はセイフヘイブンとして上昇し、景気悪化で企業が投資を控えるため原油等の需要は落ちるとして石油価格は下落している。こうした事象、つまりトランプ大統領が次に何を言うかを前もって予想できたであろうか? 中国との事務レベルの交渉は何度も会議が行われたが妥協点が見いだせなかったことはニュースでわかっていた。しかし大阪で開催されたG20サミットではトランプ大統領と習近平国家主席は会談を開き、会談直前には課税すると述べていた措置をトランプ大統領は取り下げていた。

 大和総研のレポートによれば、表向きの理由は7月31日に上海で行われた米中閣僚級協議で進展が見られなかったことだという。しかし同レポートが推測するに① 北戴河会議と10月1日の建国70周年記念式典を目前に控えた習近平国家主席の面子を潰し、中国内政における求心力を殺ぐ目的があったという。② 関税の発動により米国経済が受ける打撃を軽減する財政金融政策の準備が整ったことも見逃せないと指摘している。FRBが利下げと共にバランスシートの調整を早々に打ち切るとしたこと、及び共和党・民主党が歩み寄り、債務上限と裁量的支出上限の両方が10月からの会計年度で引き上げられることになった。こうした前提を読み解いていれば、トランプ大統領の発言もある程度予測できたのかもしれない。また、米国内経済への影響を配慮して25%の課税ではなく10%としているという。企業は25%の課税に引き上げられる前に生産国を中国から他の国に移転する時間稼ぎだともいわれる。

 今後の焦点は中国の出方であるが、妥協することはまずないだろう。報復関税も昨年行ったが、中国国内にも打撃を与える。米国の対中強硬策は、トランプ大統領独りの発案ではなく、超党派の意見だというから、米国が中国からの何の反応もなく措置を撤回することはないだろう。逆に中国は貿易という枠組みを超えた問題で米国に対抗しようとするかもしれない。いずれの場合も金買い、原油売りの市況は続くことになりそうだ。
 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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