[Vol.1061] 金(ゴールド)を手元に置く理由[5]

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。63.95ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,790.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,360元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年10月限は405.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで776.6ドル(前日比13.2ドル縮小)、円建てで2,717円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月23日 19時18分頃 先限)
6,319円/g 白金 3,602円/g
ゴム 217.0円/kg とうもろこし 34,160円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)を手元に置く理由[5]」

前回は「金(ゴールド)を手元に置く理由[4]」として、「家族のための運用」を考える上で重要な日本の状況を、人口推移の予測から確認しました。

今回は「金(ゴールド)を手元に置く理由[5]」として、日本の状況を、政府最終支出の側面から確認します。

前回の通り、年金制度における数の「支え」がさらに弱くなる可能性があるため、政府の支出の額が今後さらに大きくなることが予想されます。

日本政府の最終支出を見ると、以下の通り、近年、社会保護の分野、その内訳の一つである老齢(年金・介護など)の分野の額が、多くなっていることがわかります。

今後、生産人口の1人あたりの負担増加と、日本全体の老齢分野の支出増大が同時進行することが予想されます。このため、今よりも5年後、5年後よりも10年後、10年後よりも20年後と、年がたてばたつほど、年金制度を取り巻く環境は厳しくなるとみられます。

例えば、2021年時点で中学生・高校生の子供たちが高齢者(65歳以上)になる2070年頃、日本の人口は現在のおよそ3分の2になっているとみられています。また、高齢者(65歳以上)1人を支える生産人口(15歳から64歳)の数を試算すると、高齢者1人を支える生産人口の負担は単純計算で1.5倍に増加する可能性があります。

2070年ごろに高齢者になる世代は、社会福祉関連のコスト高の波が「今にも増して」押し寄せてくるだけでなく、(可能性の域を超えませんが)「炭素税」などの環境問題起因の新しいコストの負担にも耐え忍ばなければならない世代となる可能性もあるわけです。

こうした点を考えると、「負担や負担増加による不安の度合いは、自分よりもわが子の方が大きい」→「資金の一部で家族のための運用を」→「子供に何らかの形で運用益を託す」というアイディアが浮上するのは、ごく自然のことだと、筆者は考えます。

図:日本政府の最終支出(2018年)


出所:内閣府の資料より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。