金相場、底固めから上放れ待ち

著者:菊川 弘之
ブックマーク
 また、FRBは11月2-3日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)で、毎月の債券買い入れ額縮小(テーパリング)計画を発表、年末年始に開始と言うことが市場コンセンサスだが、2013年のバーナンキショックから2014年のテーパリング開始の際は、米10年債利回りは、テーパリング開始に向けて上昇、NY金は下落したが、実際のテーパリング開始で「知ったら終い」となり、米金利は反落、NY金は反発となった。

 既に、米FF金利先物は来年の利上げを2回弱、織り込んでおり、金利上昇を材料とした金の下げは、8月・9月の安値で、ほぼ織り込んだ可能性は高い。2014年と同様に、テーパリング開始が、金上昇の号砲となる可能性もあるだろ。また、6月高値を起点とした下降トレンドと重なる200日移動平均線を明確に上抜いた時が、そのシグナルとなるかもしれない。

 FRBは「インフレは一時的」とのスタンスを変えていないが、世界的なエネルギー危機が高まっている。原油市場は7年ぶりの高値を更新。天然ガス・石炭価格は、史上最高値更新だ。世界的な「脱炭素」の動きが加速したことで、欧米主要開発企業が原油開発への投資を縮小している。米国では過去のシェールブームでの投資負担が重く、コロナ禍で赤字が拡大したシェール企業が、財務内容改善のために投資を抑制する動きが強まり、原油価格が採算コスト(シェールオイルの生産コストは平均で1バレル=30ドル台半ばで、新規油田開発採算ラインが50ドル前後)を超えて上昇しても、生産増加のペースは鈍い。

 エネルギー価格上昇が、スタグフレーション(物価上昇と景気停滞)に陥るリスクも警戒され始めている。「良い金利上昇」で株価・ドルが上昇するなら、金の上値は抑えられるが、「悪い金利上昇」となるなら株価・ドルは下落、金は強い上昇を見せるだろう。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

http://market-samurai.livedoor.biz/