[Vol.1134] 2022年、事象発生の方向性は2021年をなぞる

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。71.35ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,788.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,620元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年01月限は473.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで830.25ドル(前日比4.45ドル縮小)、円建てで2,996円(前日比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月8日 17時10分頃 6番限)
6,514円/g 白金 3,518円/g
ゴム 236.0円/kg とうもろこし 38,420円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「2022年、事象発生の方向性は2021年をなぞる」

前回は、「大テーマを柱に、2022年を長期視点でイメージ」として、筆者が考える、来年の相場見通しを行うために必要な、2022年の長期視点のイメージを述べました。

今回は、「2022年、事象発生の方向性は2021年をなぞる」として、前回述べた条件をもとに、もう少し細かく、2022年に発生し得る事象について考えます。

仮に、元年(2020年)から、世界(小規模な社会を含む)で「効率的消費・理性重視・格差是正・低リスク社会の模索」、「新しい常識の創造」に向けた、長期的な動きが加速しはじめたばかりなのであれば、3年目にあたる2022年も、2021年と同様の事象が発生する可能性があります。

「効率的消費・理性重視・格差是正・低リスク社会の模索」、「新しい常識の創造」に向けてさまざまな事象が動き出したとはいえ、元年からわずか3年足らずでは(想定する終点は2050年)、まだまだ「黎明期(れいめいき)」、「過渡期(かとき)」の域にとどまっていると考えるのが妥当でしょう。

※黎明期:黎明は夜明けの時間帯。黎明期は、諸分野で新しい時代が始まろうとする時期。
※過渡期:安定しない、物事の移りかわりの時期。

このため、基本的に2022年は、1.2021年と同じような市場を変動させる事象が発生する、2.同じような事象でも市場が受ける短期的なインパクトは2021年よりも大きくなる、可能性が浮上します。

具体的には、新型コロナの変異株が複数発見される、中国の影響力が増す、異常気象起因の大規模災害が起きる、「脱炭素」と「新型コロナ」を巡る技術革新が進む、覇権争いが増す、脱炭素起因の原油高が起きるなど、2022年も、2021年と同様の事象が起きることを想定することが重要だと、考えます。

また、事態が「加速」していることを考えれば、2021年よりも2022年の方が、各事象がもたらす市場への短期的なインパクトが強くなることが想定されます。

前例があるから適切に対応できる、という考え方もあるかもしれませんが、元年に発生した「脱炭素」「新型コロナ」はまだ黎明期・過渡期にあるため、前例をもとに迅速に対処することは、2021年と同様、難しいと考えられます。(例えば、人類はまだ、新型コロナの変異株が発生した時の対処法を確立できていない。変異株発生は市場を急変させる。)

さらには、一つの答えを導き出せない多様化や格差に関わる事象が、同時に目立った場合、市場の変動は、より大きくなる可能性もあります。(マイナスの意味で、複数が同時に目立った場合は要注意。人権問題や経済的格差に関わる事象など。)

このように考えれば、2022年は、起き得る事象は2021年と大きく変わらないものの、各事象から受ける短期的なインパクトが大きくなる可能性があると、言えそうです。2021年をなぞるという点で言えば、楽観的な材料が過度に材料視されやすい、という傾向もみられるかもしれません。

図:長期視点の考察で得られた、2022年も起き得る事象(2021年の踏襲)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。