[Vol.1135] 脱炭素の本質は「脱欲望」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.75ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,786.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,375元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年01月限は477.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで835.6ドル(前日比6ドル拡大)、円建てで3,020円(前日比9円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月9日 16時47分頃 6番限)
6,510円/g 白金 3,490円/g
ゴム 228.9円/kg とうもろこし 38,200円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「脱炭素の本質は「脱欲望」」

前回は、「2022年、事象発生の方向性は2021年をなぞる」として、前々回に述べた条件をもとに、もう少し細かく、2022年に発生し得る事象について考えました。

今回は、「脱炭素の本質は「脱欲望」」として、今、世界的なブームとなっている「脱炭素」ついて、筆者の意見を述べます。

「脱炭素」は現在、2030~2050年の、各国のパリ協定の順守期限に向けた、黎明期・過渡期にあると、考えられます。

では「脱炭素」は、どのような過程を経て、黎明期・過渡期を乗り越え、一般化(本質に到達)するのでしょうか。この問いに対する筆者の答えは、「人類が過剰な欲望を捨てること」です。まずは少なくとも、現在のような、技術革新やビジネスの場、リーダーシップを発揮する場でなくなることが、必要でしょう。

現在、さまざまなメディアで、温室効果ガスを排出させずに、電気を効率よく作り出す議論が盛んに取り上げられている様子を目にします。発電効率・電導効率が高い太陽光パネルの量産化について、小型の原子力発電所の有効性について、火力発電の燃料にアンモニアを使う技術についてなど、枚挙にいとまがありません。

これらは、「脱炭素」の本質なのでしょうか。温室効果ガスを排出させずに、電気を効率よく作り出すことは、人類にとって非常に重要なテーマです。しかし、このことは必ずしも「脱炭素」の本質とは言えないと、筆者は考えています。「脱炭素」の本質は、「人類が過剰な欲望を捨てること」、すなわち「脱欲望」だと考えているためです。

以下のとおり、欧州の温室効果ガス排出権の価格は、2020年のバイデン氏の米大統領選挙での勝利以降、極端な上昇傾向にあり、今年10月末から11月上旬にかけて行われたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)のタイミングから、上昇のペースが増しています。

この点が意味するのは、「今のところ、人類全体として」、たとえ「脱炭素」が実生活に及んでも、過剰なレベルの豊かな生活を諦めるつもりがない、具体例で言えば、豊かな生活を支える「電力」の需要を減らす意思がない、となるでしょう。COP26の閉幕直前に合意事項に修正が加えられ、温室効果ガスを多く排出する火力発電が延命されたことと、符合します。

図:欧州の温室効果ガス排出権先物価格(月足 終値) 単位:ユーロ/トン


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。