[Vol.1153] 大暴騰する欧州の天然ガス価格

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。78.58ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,804.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は14,970元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年03月限は504.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで859.95ドル(前日比2.15ドル縮小)、円建てで3,160円(前日比95円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月11日 11時2分頃 6番限)
6,678円/g 白金 3,518円/g
ゴム 241.0円/kg とうもろこし 39,630円/t

●NY天然ガス先物(期近) 日足  単位:ドル/百万英国熱量単位


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「大暴騰する欧州の天然ガス価格」

前回は、「金(ゴールド)の教科書も改訂が必要」として、学習指導要領の改訂について書きました。社会の常識の変化に伴い、市場関係者の常識も変化しなければならない点について、触れるためでした。

今回は、「大暴騰する欧州の天然ガス価格」として、欧州、日本(LNG)、米国の天然ガス価格の推移を確認します。

以下のグラフより、欧州の天然ガス価格が「棒上げ」状態であることがわかります。理由は次の4点が同時発生しているためだと、考えられます。

1.ウクライナ情勢を巡る対立により、ロシアから欧州への供給が減少していること、2.欧州・ロシア双方で、寒波で需要が高まっているとみられること、3.「脱炭素」がきっかけで、需要増加観測が高まっていること、4.コロナショック(2020年)からの景気回復です。

ロシアと欧州をつなぐ、天然ガスの主要パイプラインにおいて、通常は西向き(ロシア→欧州)に流れるところ、一時、東向き(欧州→ロシア)に流れている可能性を指摘する報道がありました。

ウクライナ情勢の混迷度が増していることや、ロシアでの厳冬期の需要増大(欧州向けの供給減少)をうかがわせる報道だったと言えます。

かくして、足元、欧州の天然ガス価格は、日本のLNG(液化天然ガス)の価格の約3倍、シェール革命により長期的な低位安定傾向にある米国の価格の10倍以上の水準で推移しています。

地域間で価格の波の振幅が大きく異なるのは、価格決定の仕組み、為替(対ドルのユーロ、円相場)の動向、(上記で述べた)調達元や輸送インフラを巡るリスクの度合いや、当該地域での政策など、複数の要素で差異があるためだと、考えられます。

図:主要国・地域の天然ガス価格 単位:ドル/百万英国熱量単位


出所:World Bank(世界銀行)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。