週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.18ドル高の82.17ドル、ブレント原油は2.25ドル高の84.74ドルとなった。

 前週末の海外原油は米雇用統計の伸びが市場予想に届かなかったことが重しとなったほか、物価上昇の加速でFRBが早期利上げに踏み切るとの警戒感からリスクオフムードが強まっていることも弱材料となり軟調な推移となった。

 先週はカザフスタンやリビアの生産量が回復に向かっているとの報やドル安進行したことが支えとなる中で堅調な推移となり、昨年11月に付けた一代高値の82.13ドルを上抜いて上昇する展開となった。週明けは反政府デモの影響で抑えられていたカザフスタン・テンギス油田の産油量を通常の生産水準に戻す計画が伝わったことが重しとなったほか、リビアの産油量も回復に向かっていると伝わったことから続落した。翌11日はEIA月報において2022年の米石油需要が上方修正され、コロナ禍においても需要の回復が続くとの期待感が高まったことから反発した。週中にかけても堅調な流れを引き継ぐと、米消費者物価指数公表後に大きくドル安に振れたことや、EIA統計で原油在庫が7週連続で減少し堅調な需要が示されたことが好感され続伸する格好となった。週末にかけては上昇した利食い売りの動きから上げ幅を削られると、米金融引き締めへの警戒感から株安進行するなどリスクオフムードが強まったことで原油にも売りが入り軟調な推移となった。



 今週の原油相場は戻り売り優勢となる展開が想定されそうか。このところの上昇要因だったリビアやカザフスタンの供給懸念が一旦落ち着き、コロナ感染拡大で需要の減少が警戒される中で足元では需給の緩みが指摘されている。またFRBによる早期の金融正常化への警戒感からリスクオフムードが強まっており、株式相場が軟調に推移していることも原油の重しとなりそうだ。WTIベースで80ドル以上では上値の重さも感じられ、テクニカル的にも相場の過熱感を示すRSIで買われすぎの目安の70を大きく上回る77.08となっており、利食い売りが出やすい水準となっている。また天然ガスが高値から反落していることも原油の重しとなりそうであり、目先は手じまい売り優勢となる可能性を頭に入れておきたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。