[Vol.1160] 脱炭素は後戻りしない。物価高はしばらく続く

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。85.18ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,840.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,940元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年03月限は545.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで802.55ドル(前日比12.25ドル縮小)、円建てで2,974円(前日比36円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月20日 18時13分頃 6番限)
6,753円/g 白金 3,779円/g
ゴム 250.4円/kg とうもろこし 40,560円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「脱炭素は後戻りしない。物価高はしばらく続く」

前回は、「物価高の要因を個別と底上げに分ける」として、足元で起きている物価高の背景を考えました。

今回は、「脱炭素は後戻りしない。物価高はしばらく続く」として、黎明期の脱炭素と物価高の関係について述べます。

ロシアがウクライナに侵攻する可能性があること、OPECプラス(石油輸出国機構プラス)が価格をつり上げていること、トルコとイラクの間のパイプラインに支障が生じたことなどは、確かに、エネルギー価格の上昇要因です。

しかし、それが全てではないと、筆者は考えています。

上記の個別の要因以外に、黎明(れいめい)期の「脱炭素」が、エネルギー価格を上昇させていると考えます(黎明期=夜明けの時間帯。物事のはじまり)。以下は、黎明期・過渡期の「脱炭素」が社会に与える影響です。

黎明期の「脱炭素」が、エネルギー価格の上昇に貢献している(してしまっている)ことがわかります。黎明期の「脱炭素」が、「電力価格」と「輸送コスト」を上昇させ、原材料価格全体を「底上げ」しているのです。

下図の通り、黎明期の「脱炭素」は、エネルギー価格だけでなく、農産物、金属価格も押し上げているとみられ、「コスト・プッシュ型の物価高」を加速させていると考えられます。

その黎明期の「脱炭素」は、その名のとおり、始まったばかりとみられ、まだ当分、「脱炭素」起因の物価高が続く可能性があると、筆者は考えています。

人類が立てた「脱炭素」の期限は、パリ協定やSDGsを参照すれば、2030年から2050年です。「脱炭素」推進を全面に推し出したバイデン氏が米大統領選挙で勝利した2020年を元年とすると、2022年はまだ3年目です。

まだしばらく、「脱炭素」起因のコモディティ価格の上昇は続き、それにより、さまざまな末端の品物・サービスの価格が、(景気の良しあしにかかわらず)上昇する可能性があります。

このような状況の中、わたしたちはどのような心構えで「物価高」と対峙(たいじ)することが求められるのでしょうか。次回以降、その心構えについて、筆者の見解を述べます。

図:黎明期・過渡期の「脱炭素」が社会に与える影響

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。