[Vol.1162] ビットコイン急落は金融相場終焉の合図

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。85.36ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,841.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,340元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年03月限は543.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで806.65ドル(前日比9.95ドル拡大)、円建てで2,960円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月24日 18時3分頃 6番限)
6,722円/g 白金 3,762円/g
ゴム 236.6円/kg とうもろこし 40,530円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ビットコイン急落は金融相場終焉の合図」

前回は、「モノから心に幸福の軸を移す必要がある」として、社会を取り巻く価値観の変化について、筆者の考えを述べました。

今回は、「ビットコイン急落は金融相場終焉の合図」として、足元のビットコインの価格急落の意味について、筆者の考えを書きます。

今年に入り、最も象徴的な値動きを演じている投資対象の一つに、暗号資産が挙げられます。以下のとおり、足元、主要銘柄であるビットコイン、イーサリアム、リップルの価格は、急落状態にあります。

ビットコインは、昨年秋に米国などで先物のETFが上場しました。これを機に、現物市場でも資金流入が進み、価格上昇が期待されていましたが、実際は上図のとおり、秋から冬にかけて、下落しています。

ビットコインを含む暗号資産価格の下落には、いくつか理由がありますが、最も大きな理由は、米国の金融政策の方針が、本格的に引締め方向に進み始めたことだと、筆者は考えています。暗号資産は、どの国の信用を必要としない「無国籍通貨」です。

昨年秋ごろから、世界で最も多く使われている通貨「米ドル」の金利や流通量を調節する機関(米国の中央銀行にあたるFRB)が、金利を引き上げる(利上げ)、社会に放出する量を減らす(金融緩和縮小)ことを本格的に議論し始め、一部を開始しました。

FRBのこうした動きは、米ドルの先高観や保有妙味を醸成すると同時に、相対的に「無国籍通貨」の保有妙味を低下させるきっかけになっていると考えられます。昨年の秋から冬にかけて、暗号資産の価格推移が軟調になったのはこのためです。

そして、年初から、暗号資産の価格下落に勢い付いたのは、FRBが米ドルを社会から吸収すること(金融引締め)を検討し始め、これまで以上に、米ドルの先高感・保有妙味が強まったためだと、考えられます。

ビットコインをはじめとした暗号資産の価格上昇は、「投機筋のなせる業(わざ)。市場全体に強いリスク・オン」という印象がありました。逆に、暗号資産の価格下落は、「投機筋の活動縮小。市場全体に強いリスク・オフ」を強く印象付けています。

足元の暗号資産の価格急落は、2020年春から2021年後半にかけて発生した、市場全体を覆った「金融相場」が、終わりを迎えた合図であると、筆者は考えています。株価急落の遠因とも言えるでしょう。

図:主要暗号資産の価格推移 (2021年12月31日=100)


出所:Investing.comデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。