[Vol.1168] 米シェール生産効率の頭打ち感が鮮明に

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。87.84ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,805.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 春節のため休場(1月31日から2月4日まで)

上海原油(上海国際能源取引中心) 春節のため休場(1月31日から2月4日まで)

金・プラチナの価格差、ドル建てで764.75ドル(前日比9.45ドル縮小)、円建てで2,877円(前日比14円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月1日 19時40分頃 6番限)
6,659円/g 白金 3,782円/g
ゴム 246.4円/kg とうもろこし 41,600円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米シェール生産効率の頭打ち感が鮮明に」

前回は、「米シェール「脱炭素」で開発鈍化」として、米国のシェール主要地区における開発指標を確認しました。

今回は、「米シェール生産効率の頭打ち感が鮮明に」として、米国のシェール主要地区における生産効率を示す指標を確認します。

以下のグラフは、米国のシェール主要地区における、新規1油井あたりの原油生産量の推移です(7地区平均)。仕上げ後、生産が始まってまもない井戸1つあたりの原油生産量で、新規油井の生産効率を示しています。

また、待機井戸(掘削は完了したが仕上げを行っていない井戸)の推移を併記しています。

新規油井の生産効率を示す、新規1油井あたりの原油生産量は高水準ではあるものの、低下傾向にあります。このことは、原油を効率よく生産することができる良質な待機井戸が減少していることを示唆しています。

また、待機井戸そのものが、減少に転じているため、開発業者たちが、新たに掘削をするよりも、既存の待機井戸に仕上げを施すことで、生産にこぎつけようとしていることがうかがえます。

「脱炭素」の潮流が、リグを稼働させて井戸を掘る行為を停滞させている可能性があります(新規開発の鈍化)。さらには、待機井戸に仕上げを施すことに重点を置き、開発は進んでいるものの、その効率も頭打ち状態…というわけです。

米国は世界No1の産油国です。その米国の原油生産量のおよそ70%を占めるシェール主要地区の原油生産量は、原油価格が大きく回復しても、回復途上のままです。

この点は、米国における大きな供給制約です。政治起因であるため、リーダー達の方針が変わり、「脱炭素」の潮流が緩まない限り、米国の原油生産増加は難しいと、筆者は考えています。

図:米シェール主要地区の新規油井の生産効率と待機井戸 (米シェール主要地区の1油井あたりの原油生産量は、EIAが提唱する7地区の平均)


出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。