短期的な買われ過ぎ感も調整は限定的か?

著者:菊川 弘之
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 過去の産油国絡みの紛争と原油市場の反応を振り返ると、イラクのクェート侵攻時は、生産量の多い産油国の供給障害が囃されたが、2019年のサウジ石油精製施設被害は短期間で回復したこともあり、反騰は長続きせず。ロシアによるジョージア戦争(5日間戦争)や、クリミア併合時には、原油市場は大きな反応を見せず。

 国際エネルギー機関(IEA)月報では、今年後半に向けて需給は改善見通しで、年平均で日量80万バレル規模の余剰推計だったが、今回のウクライナ侵攻に伴い、西側諸国向け輸出が3月からすべて途絶えた場合、2022年の平均で日量400万バレル程度の不足に陥る。20年の日本の石油消費(同330万バレル)を上回る規模になる。

 仮に、イラン核合意の復帰で日量130万バレル前後のイラン産原油が世界市場に流入しても、合意から3ヶ月程度の猶予期間が設けられると思われ、ロシア産原油の輸出減少(ロシアの原油輸出量は日量400万~500万バレル)を補うのは不十分。既に、国際銀行間通信協会(SWIFT)がロシアの主要銀行を排除したため、2日時点で日量700万バレル程度(世界供給の8%相当)のロシア産とロシア経由のカザフスタン産の原油・石油製品の輸出が止まっている。原油市場にテクニカル的な調整が入っても、株価の暴落等がなければ、値幅調整は限定的・原油の高止まり、インフレ懸念は続きそうだ。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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