[Vol.1196] 金(ゴールド)、排出権は反発

著者:吉田 哲
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原油反落。ウクライナ情勢起因の供給減少懸念の後退などで。96.61ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,932.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は13,350元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年04月限は628.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで905.9ドル(前日比2.6ドル縮小)、円建てで3,520円(前日比7円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月15日 18時33分頃 6番限)
7,300円/g 白金 3,780円/g
ゴム 242.8円/kg とうもろこし 48,210円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)、排出権は反発」

前回は、「「総悲観」は去った?侵攻後の価格推移4分類」として、ロシアによるウクライナ侵攻後の、さまざまな銘柄の価格推移に注目しました。

今回は、「金(ゴールド)、排出権は反発」として、3月2週目に反発した、さまざまな銘柄の価格推移に注目します。

前回述べた「1.上昇継続」(ウクライナ侵攻後、3月2週目まで上昇継続)に該当する銘柄には、トウモロコシ、菜種、金(ゴールド)、ドル指数、ニッケルが挙げられます。

トウモロコシと菜種は、ウクライナの主要な生産・輸出品目の一つであるため、情勢悪化を受けて供給不安が生じて価格が上昇しています。

金(ゴールド)は侵攻後、不安が強まったことを受け、「資金の逃避先」と目され価格が上昇しています。また、原油高を受けたインフレ(相対的な通貨安)懸念により、「代替通貨」として注目が集まっていることも金価格上昇の一因と言えます。

ドル指数は情勢悪化を受けた「有事のドル買い」の側面もあるかもしれませんが、主には、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレを鎮静化させるため、米国の金融政策をより具体的に、引き締め方向に向かわせることが意識されているためだと、考えられます。

ニッケルについては、3月上旬に史上最高値をつけるなど、騰勢を強めていますが、取引所が一時的に売買を停止したり、成立した価格を取り消すことを検討していたりするなど、正常ではない状態にあります。

以下のグラフは「2.下落後反発」にあたる銘柄です。ウクライナ侵攻が発生したことで、景気が悪化する懸念が強まり、欧州やアジアの主要な株価指数が一時的に反落しました。

また、ロシア軍がウクライナ国内の主要な原発(原子力発電所)を攻撃・占拠したことで、「脱炭素」になじむ電源として注目されていた原発にリスクがあることが意識され、「脱炭素」を否定的にとらえるムードが一部で広がりました。これにより、「脱炭素」を推進する上で欠かせない、温室効果ガス排出権の価格が反落しました。

しかし、欧州やアジアの株価指数、温室効果ガス排出権価格は、3月の2週目から、反発し始めています。一時の悲観的なムードが、和らいだ印象があります。

図:ウクライナ侵攻前日以降の価格推移「2.下落後 反発」


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。