[Vol.1198] 「総悲観」から「現実的悲観」に移行

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。98.92ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,942.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は13,290元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年04月限は619.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで914.95ドル(前日比13.85ドル拡大)、円建てで3,530円(前日比12円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月17日 18時16分頃 6番限)
7,376円/g 白金 3,846円/g
ゴム 246.8円/kg とうもろこし 47,880円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「総悲観」から「現実的悲観」に移行」

前回は、「原油、欧州天然ガスは反落」として、3月2週目から反落した、さまざまな銘柄の価格推移に注目しました。

今回は、「「総悲観」から「現実的悲観」に移行」として、3月2週目に市場全体のムードが変化したことについて書きます。

前回までの数回、主要銘柄を4つのパターンに分け、価格の推移を確認しました。まとめると、以下のようになります。

「1.上昇継続」に分類した銘柄は、大きな急上昇がなかったため、大きな反動安もなく、比較的緩やかに上昇している銘柄だと言えます(ニッケルを除く)。「2.下落後反発」と「3.上昇後反落」は、3月の2週目がターニングポイントになったと考えられます。「4.反発せず」は、ウクライナ情勢以外の材料が作用しているとみられます。

以下より「2.下落後反発」「3.上昇後反落」に影響したとみられる、3月2週目で生じた変化について、確認します。

以下の図のとおり、3月2週目に発生した変化は、2のパターンの銘柄(バルチック海運指数、アジア・欧州の株価指数)を反発、3のパターンの銘柄(エネルギー、小麦、一部の金属)を反落させたと考えられます。

西側諸国(この場合は欧米中心)がロシアに対して科したさまざまな制裁の内容が具体的になり、制裁の要点(何が主な不安材料なのか)が見えはじめたことや、ゼレンスキー ウクライナ大統領が早期のNATO(北大西洋条約機構。西側諸国の軍事同盟)加盟を断念することを示唆し、今回の情勢悪化の発端ともいえる点を振り出しに戻す姿勢を示したことなどが、3月2週目に発生した主な変化です。

こうした変化が、ウクライナ侵攻後に支配的となった2のパターンの銘柄への懸念(悲観論)を和らげて価格を反発に、3の銘柄のパターンの銘柄への懸念(供給減少)を和らげて価格を反落に導いたと、考えられます。

このように考えれば、市場全体のムードは、侵攻直後に発生した「盲目的な総悲観」が一巡し、「現実的な悲観」(軍事侵攻はまだ終わっていないため悲観は継続)に移行したと言えるでしょう。

図:3月2週目で生じた変化


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。