[Vol.1203] 小麦:ロシア・ウクライナ分を補うことは難しい

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。109.38ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,955.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は13,510元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年05月限は722.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで927.85ドル(前日比3.15ドル縮小)、円建てで3,700円(前日比7円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月25日 17時46分頃 6番限)
7,629円/g 白金 3,929円/g
ゴム 256.0円/kg とうもろこし 50,100円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「小麦:ロシア・ウクライナ分を補うことは難しい」

前回は、「原油:ロシア分を補うことは難しい」として、西側諸国の制裁により、世界全体としてロシア産原油の供給が減少する見通しとなる中、その減少により発生する不足分を補うことができるかどうかについて、筆者の考えを書きました。

今回は、「小麦:ロシア・ウクライナ分を補うことは難しい」として、ロシアのウクライナ侵攻により、世界全体としてロシアとウクライナ産の小麦の供給が減少する懸念が生じている中、その減少により発生する不足分を補うことができるかどうかについて、筆者の考えを書きます。

目下、ロシアはユーラシア連合(アルメニア、カザフスタン、キルギス、ベラルーシ。ロシアも含まれる)に対して小麦の輸出を停止しています(6月30日まで)。また、ウクライナ国内では情勢悪化のため今年度の作付けがままならない懸念が生じています。

ロシアとウクライナの世界全体に占める小麦の輸出シェアは合わせて28%です。ウクライナとロシア産の小麦の20%がエジプト、16%がトルコ向けです。その他、世界各地のイスラム教と関わりが深い国々へ輸出されていることがわかります(小麦粉はハラール認証製品)。(2020年の数量ベース。FAO(国連食糧農業機関)のデータより)

仮に、ロシアとウクライナからの小麦の供給が途絶した場合、現在ロシアとウクライナから小麦を輸入している国々は、合計5,532万トン(年間)もの小麦を新たに調達しなければなりません。

以下は、主要小麦生産国の直近5年における最大生産量(年間ベース)と、直近(2020年)の小麦生産量の差(現実的な増産余力)です。主要生産国が直近で行った最も大規模な生産を行うことで、ロシアとウクライナ産小麦の不足分を補うことができるかを、調べました。

仮に、有力国の生産量が直近5年間の最大になった場合、ロシアとウクライナ分全量(5,532万トン)を補うことができる計算になります。とはいえ、「いずれの国も大豊作となること」が大前提です。

ロシアとウクライナの不足分を補えるかは作柄次第(大豊作頼み)、という不安定さがあり、新しいウクライナ情勢のステージ「ウクライナ情勢2.0」では、こうした不安定さが小麦価格を押し上げる場面が散見される可能性があります。足元の小麦価格再反発もその一端である可能性があります。

図:現実的な増産余力(直近5年間最大生産量ー直近生産量) 単位:トン


出所:FAO(国連食糧農業機関)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。