[Vol.1208] コモディティ市況は長期高止まりの公算

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。100.86ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,931.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は13,830元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年05月限は648.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで942.3ドル(前日比10.1ドル縮小)、円建てで3,752円(前日比8円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月1日 18時09分頃 6番限)
7,599円/g 白金 3,847円/g
ゴム 261.7円/kg とうもろこし 50,650円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「コモディティ市況は長期高止まりの公算」

前回は、「「露中北」の東アジアにおける役割分担」として、3月4週目(20日~26日)に見られた、「露中北」の具体的な動きから推測できる、3カ国の役割について述べました。

今回は、「コモディティ市況は長期高止まりの公算」として、前回述べた「露中北」の東アジアにおける連携強化が及ぼし得る、コモディティ市場への影響について、筆者の考えを述べます。

1.中国が制裁の抜け穴になりロシアは生き残る→西側ではロシア制裁による資源高が続く。

「露中北」の連携が強化された場合、ロシアは西側による制裁下にあっても、生き残ることができます。中国がロシア産の資源(エネルギー、金属、農産物)を世界に販売してくれるためです。

制裁が続くうちは、世界的なロシア産資源の供給減少懸念が続き、西側で価格が高止まりする可能性があります。中国が高止まりする価格でロシア産の資源(表向きは中国産となる可能性)を世界に向けて販売し、ロシアは一定程度、その利益を享受する可能性があります。

2.中国がロシアと同様の策を講じる→ドル不安定化・金(ゴールド)上昇。

連携強化に乗じ、中国がロシアと同様の策を講じる可能性があります。自国の輸出品目の出し渋りをしたり、決済通貨を自国通貨に限定したりする、などの策です。

中国の場合、メインの輸出品目は資源ではなく、電子製品などの加工品ですが、諸外国がこれらの品目を中国から購入する場合、「元」を用立てることが求められる可能性があります。

こうした動きは、中国をサプライチェーン(供給網)に含めている国にとって、大きな打撃となります(サプライチェーンにおけるさらなる懸念増)。また、人民元の基軸通貨化の足掛かりとなり、米ドル一強体制に風穴があく可能性が浮上します。

ドルと金(ゴールド)は、「世界のお金」という共通項を持つため、ドルの弱体化は、金相場を押し上げる材料になり得ます。

ウクライナ危機が勃発して1カ月強が経過しました。この間、米露対立が激化するにつれて、対米で志を同じくする「露中北」の東アジアにおける連携強化が進んできたと、考えられます。

上述の通り、「露中北」の連携強化は、「中国が制裁の抜け穴になりロシアは生き残る→西側ではロシア制裁による資源高が続く」、「中国がロシアと同様の策を講じる→ドル不安定化・金(ゴールド)上昇」などの原因になり得ます。

リスクは、ウクライナとロシア西部、西側諸国だけでなく、ロシア東部、中国、北朝鮮を含んだ東アジア一帯でも拡大しつつあると考えるのが、妥当でしょう。

今後も、「露中北」連携強化による、資源(エネルギー、金属、農産物)、金(ゴールド)価格の上昇に気を付ける必要があると、筆者は考えています。

図:コモディティ(商品)市況は長期高止まりの公算


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。