[Vol.1221] 金(ゴールド)の理論値と実態

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。102.91ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,951.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は13,400元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年06月限は676.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで973ドル(前日比2.7ドル拡大)、円建てで4,048円(前日比20円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月20日 18時43分頃 6番限)
7,993円/g
白金 3,945円/g
ゴム 261.5円/kg
とうもろこし 56,890円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 7日午前8時59分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)の理論値と実態」

前回は、「メインは「ドル建て」」として、国際商品における「ドル建て」と「異通貨同一商品」の関係について書きました。

今回は、「金(ゴールド)の理論値と実態」として、「急激な円安」が与える影響や、金(ゴールド)の理論値と実態などについて書きます。

前回、円建て金(ゴールド)とドル建て金で、およそ10%のパフォーマンスに差が生じたことについて触れました。この期間、プラチナ、原油、トウモロコシも、金と同様、円建てのパフォーマンスがドル建てを上回りました。

いずれも、「主」である指標性を備えたドル建て価格よりも、「従」である円建て価格の方が、上昇率が高いわけですが、この事象を説明するのに登場するのが「ドル/円相場の急変」です。

「異通貨同一商品」において、円建てのパフォーマンスがドル建てを上回ったのは、「主」よりも「強弱」によってもたらされた圧力が強かったためです。円建ての上振れ分(ドル建て以上の上昇分)は、「ドル/円相場が大きく動いたこと」によって作られた、と言えます。

「円建て」銘柄の価格は、主である「ドル建て」に追随することが基本で、この「主従関係」に「為替」などが「強弱」をもたらします。

ドル/円相場の急激な上昇(円安方向への推移)開始とほぼ同時に、「金(ゴールド)の円ドルレシオ」も、上昇しはじめました(「円ドルレシオ」は、「円建て金÷ドル建て金」で計算。値が高ければ高いほど、円建て価格がドル建て価格に比べて強いことを意味する)。

ドル/円相場と「金(ゴールド)の円ドルレシオ」は、ほぼ同時に騰勢を強めていることから、「主」であるドル建て金価格が「従」である円建て金価格に影響を及ぼしつつも、ドル/円が強い「強弱」を加えていたことがうかがえます。

また、報道を見ていると、「急激な円安」をきっかけとした円建て価格の上昇(ドル建て以上の上昇)について、さまざまな説明がなされています。

「円安=輸入物価上昇」という連想で円建て価格が上昇している、円安は「円が弱い・ドルが強い」ことを意味し、同じ商品でも弱い通貨で取引されている方が割安に映り、買われている、などです。

上記2点のほか、「理論値」が上昇し、円建てに先高観が生じる点も挙げられます。理論値はその時の「ドル建て価格」と「ドル/円」から求められる計算上の「円建て価格」です。

以下の通り、ドル建てスポット金(ゴールド)、ドル/円、それぞれの終値から計算した理論値は(スポット金価格×ドル/円÷31.1035)、2月24日が7,072円、4月15日が8,043円で、上昇幅は971円、変動率は+13.7%でした。実際の大阪金先物(中心限月)の上昇幅は935円、変動率は+13.1%でした。

実際の変動幅と変動率は、理論値をわずかに下回ったものの、「ほぼ」同一と言ってよい値でした。わずか1カ月半で10%弱も進行した円安は、円建て価格に先高観を与え、ドル建てを大きく上回るパフォーマンスを生み出した、と言えそうです。

図:金(ゴールド)の理論値と実態


出所:ブルームバーグのデータなどをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。