需給は全ての材料に優先する(投機売りVS需給タイト)

著者:菊川 弘之
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 ロシアによるウクライナ侵攻に伴う西側の制裁強化で、ロシアが生産の4割を占めるパラジウムから、白金へのシフトも意識されている。排ガス浄化装置について、白金への仕様変更は数年単位の時間がかかると見られるが、西側諸国がロシアへの資源依存を避ける方向に動けば、中国以外でも代替が進む可能性がある。ロシアの白金生産は世界の1割超で、パラジウムより依存度は低い。中国の過剰輸入やロシア問題が長引けば、白金価格を押し上げる可能性がある。

 過去、CFTC建玉明細で、大口投機玉が売り越しになった局面を振り返ると、売り越しに伴って付けた安値は、結果として自律反発に対しての買い場を提供している格好となっている。

 2019年は米中貿易戦争や、合意なきブレグジット懸念などを背景に売り越しとなったが、売り越しは1週のみ。

 2018年は、米中貿易戦争激化で報復制裁関税の応酬などを嫌気して下落。大口投機玉の売り越しは14週連続となった。

 2004年の売り越しは、5週連続。2001年は22週連続だった。

 世界的な電気自動車へのシフトに伴う排ガス触媒需要の低下観測から長期的な需給見通しは弱いものの、NY白金の900ドル以下では、長期上昇トレンドを形成している金相場との比較で、相対的な割安感が評価される局面も想定される。現段階では、チャート上の底打ち確認はできないものの、大口投機玉の売り越しが常態となる可能性は低いと思われ、底打ち確認後の買い場探し戦術を考えたい。

 「需給はすべての材料に優先する」。投機で売られた安値は中長期的な買い場を提供することとなろう。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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