週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比4.59ドル安の83.62ドル、ブレント原油は4.54ドル安の89.39ドルとなった。

 前週末の海外原油は小反発。米雇用統計の発表後に株価が上昇し、原油にも買いが入る格好となった。しかしその後は株価が失速し、原油も上げ幅を縮小する展開となっている。またロシアがノルドストリームの再開を延期すると発表したことでリスク回避のドル高となったことも重しとなった模様。

 先週は各国中銀の金融引き締めによる世界的な景気悪化懸念から一段下げとなった。週明け5日は続伸。OPECプラスが10月の生産量を日量10万B減らすことで合意したことが相場を押し上げた。しかし、バイデン米大統領がエネルギー価格の引き下げに向けてあらゆる措置を講じる決意だとホワイトハウスが発表したことで高値から値を削る展開となった。次回会合は10月5日に予定されているが、必要があれば随時会合を開くとしている。6日は反落。WTIは前日休場のため終値としては横ばいとなったが、ブレントは下落した。OPECプラスの減産を受けて一時的に買われる場面もあったが、実質的な減産幅がわずかであることや、ドル高となったことが相場を圧迫した。またECB理事会で大幅利上げが協議される可能性や中国のゼロコロナ政策への懸念も重しとなっている。7日は続落。世界的な景気悪化懸念が圧迫要因となり、WTIで前回安値の85ドルを割ったことでテクニカルな売りも入ったと思われる。また中国の8月貿易統計が予想を下回ったことや、同国の8月原油輸入が前年同月比で9.4%減少していたことも重しとなった。8日は反発。前日急落の反動や、プーチン大統領がロシア産エネルギー価格の上限設定に関与する国へのエネルギー供給を停止すると発言したことが支援要因となった。ただ、ECBが0.75%の利上げを決定したことや中国の景気悪化懸念が上値を抑える格好となっている。EIA統計では原油在庫が大幅増加となったが、SPR放出の影響としてあまり材料視はされなかった模様。

NY原油チャート

 今週の原油相場は、引き続き下値懸念の強い展開が予想される。5日のOPECプラス会合で10月に日量10万Bの減産で合意したものの、現状底入れ要因とはなっていない。インフレ抑制のため各国が大幅な利上げを継続、また中国の8月原油輸入が前年比9.4%も急減しており石油需要減退懸念がより強まっている。NYダウは週明け31000ドルを維持して反発基調となっており原油相場も目先は自律反発局面となりそうだが、テクニカル的にはブレント原油で100ドル手前で強い上値抵抗線があり、95ドル~85ドルへレンジを切り下げて下落相場継続の可能性が高いとみる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。