週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.70ドル高の85.32ドル、ブレント原油は1.81ドル高の91.20ドルとなった。

 前週末の海外原油は大幅に続伸した。露大統領が天然ガスに上限を設定した場合、欧州への石油ガスの輸出を停止すると発言したことから、供給懸念が高まった。

 先週も序盤は前週からの流れを引き継ぎ底堅い動きとなった。週明け12日は反発。前週の露大統領の発言から欧州の冬季供給懸念が意識された。またイランの核合意復帰の可能性が低下したことなども影響した。翌13日は反落となった。米国消費者物価が前月比で予想外に上昇したことで、大幅にドル高進行し株価も急落したことなどもあり売りが優勢となった。ただ、WTI原油が80ドルを割り込むようなら米国が戦略備蓄の補充を検討すると報じられたこともあり、安値からは切り返した。翌14日は反発した。IEAが今冬は価格が高騰しているガスから石油へ暖房需要がシフトする見通しを示したことや、米国内の鉄道輸送がストライキにより一部止まる可能性があることが懸念された。エタノールや一部地域では石油輸送も鉄道に大きく依存しているようだ。翌15日は大幅に反落した。米国の鉄道ストも労使交渉が暫定合意されたことで回避されたこと、また翌週のFOMCを控え利上げ警戒や中国の需要が低調であることなども下落要因となったようだ。翌16日は前日の下落が大きかった分押し目買いが優勢な展開となっている。

NY原油チャート

 中長期的に戻り売りのチャートとなっている。現状は中国の石油の需要面での懸念や選挙前の米政権のインフレ退治というテーマ対し、欧州の冬季エネルギー供給への懸念という構図となっている。特段現状大幅な供給超過という状態ではなく、イランの市場復帰への期待は後退している点など原油の下支え要因がないわけではないが、特に今週は21日にFOMCを控えている点もあり、原油に限らずドル建てのコモディティは売圧力を受ける可能性は見ておく必要がある。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。