サウジは生産量だけでなく、原油在庫も半減!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反発。株価指数指数の反発などで。58.63ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,511.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年01月限は11,840元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年11月限は463.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで563.95ドル(前日比0.15ドル拡大)、円建てで1,931円(前日比17円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(9月20日 17時31分頃 先限)
 5,208円/g 白金 3,277円/g 原油 39,510円/kl
ゴム 167.0円/kg とうもろこし 23,680円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジは生産量だけでなく、原油在庫も半減か!?」

今回は「サウジは生産量だけでなく、原油在庫も半減か!?」として、以前の「サウジ生産回復でも不透明感。石油在庫は1年8カ月程度あり」の最後で触れた、サウジの原油在庫について書きます。

共同機関データイニシアティブ(JODI)のデータによれば、サウジの原油在庫は2019年7月時点で1億7979万6000バレルあります。(4億バレル強ある米国の原油在庫の半分以下)

先週末に起きたドローンによる攻撃の影響で、サウジが在庫を取り崩して足元の対応をしているとの報道もありました。(被害を受けて減少した原油の生産量は日量570万バレル。今月中には生産が完全に復活する模様)

攻撃を受けた9月14日から9月30日までの17日間、在庫を取り崩したとすると、最大で9690万バレル(日量570万バレル×17日間)の在庫の取り崩しが行われる計算になります。(順次、生産が回復してきているとみられ、実際に取り崩す量は9690万バレルよりも少なくなるとみられる)

仮に7月時点の在庫から想定される最大の減少量である9690万バレルを差し引けば、サウジの在庫は半減以下(およそ54%減少)の8289万バレル程度になるとみられます。

在庫の量が8289万バレルとなると、新たな攻撃が起き、今回と同じ規模の供給減少が起きた場合、15日間程度で在庫がなくなります。

今回の攻撃はサウジの石油関連施設がドローンによる攻撃に弱いことだけでなく、サウジの原油在庫の量が心もとないことを露呈したと言えます。

もともと、逆オイルショックが発生しておよそ1年後から、サウジの原油在庫は減少傾向にありました。

原油価格低迷の折、生産にかかるコストを下げる意図があったこと、2017年1月の協調減産開始以降は、減産を順守しつつも、在庫を取り崩して一定の輸出量を維持する意図があったとみられます。

まずは、新たな攻撃が起きないことが望まれます。

図:サウジの原油在庫 単位:百万バレル
サウジの原油在庫

出所:JODIのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。