[Vol.1382] 「脱米国」加速は止まらない。不安は超長期化

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。74.77ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,785.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は13,090元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年02月限は536.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで784.4ドル(前日比9.8ドル拡大)、円建てで3,519円(前日比17円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月16日 17時50分頃 6番限)
7,819円/g
白金 4,300円/g
ゴム 230.3円/kg
とうもろこし 46,120円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『脱米国』加速は止まらない。不安は超長期化」
前回は、「保有高を増やすのは『非民主国家』の中央銀行」として、金(ゴールド)保有量の増加が目立った国を、述べました。

今回は、「『脱米国』加速は止まらない。不安は超長期化」として、米国政府発行の債務証券(米国債含む)保有額について、述べます。

前回、2010年ごろから、「非民主的」な国々が増えはじめ、「民主的」な国々が減少しはじめたと述べました。このタイミングにどのような意味があるのでしょうか。以下は、米国政府(財務省)が発行する債務証券(米国債など)の残高の推移です。

2010年ごろから、中国の同証券残高が減少に転じました。リーマン・ショック発生の2年後です。同ショックについては、さまざまな解釈がなされていますが、今改めて考えてみると、「資本主義陣営に開いたありの一穴」だと言えなくもありません。特に金融緩和が本格化した2010年ごろからは、各所で資本主義の是非が問われ始めたと、記憶しています。

同ショックは、自由な市場で、競争を繰り返すことが発展につながると信じて疑わなかった資本主義社会が、「一部」過ちを認めざるを得なくなった出来事だったと言えます。その様子は、それを見て、それにあこがれて暮らしていた非資本主義社会の人々を、少なからず失望させた可能性があります。

「資本主義」という、自由を旨とする考え方は、「民主的」であり、「民主的な国」の多くは「資本主義」を是としています。その意味では、リーマン・ショックは、民主的な国々の基盤を揺らし、同時に、非民主的な国々に独自路線への回帰を迫る出来事だったと、筆者はみています。

そう思うと、以下のグラフは、中国という非民主的とされる国が、民主的であることを目指すことをやめた(独自路線を行くことを決意した)一部始終を描いているように思えてきます。

こうした「脱米国」の動きは、サウジアラビアと急接近して人民元で原油の決済ができるように交渉をしていることからも見えてきます(この場合は脱米ドル)。

2023年も「脱米国」「脱ドル」「脱西側」が、随所で見え隠れすると、筆者はにらんでいます。不安感をあおるこうした動きは、通年で金(ゴールド)相場を支えると、みています(7つのテーマの「超長期VUCA時代への備え」に関わる)。

今回の数回で、2023年の金(ゴールド)相場の動向を考えました。ご参考になれば、幸いです。

図:米国政府発行の債務証券(米国債含む)保有額 単位:10億ドル
図:米国政府発行の債務証券(米国債含む)保有額 単位:10億ドル

出所:米財務省/連邦準備制度理事会のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。