サウジドローン事件は自作自演でないと言い切れるのか?

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反落。ドル指数の反発などで。55.54ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,493.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年01月限は11,470元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。19年11月限は447.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで563.35ドル(前日比6.95ドル縮小)、円建てで1,941円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(9月30日 18時19分頃 先限)
 5,150円/g 白金 3,209円/g 原油 37,400円/kl
ゴム 160.1円/kg とうもろこし 23,510円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジドローン事件は自作自演でないと言い切れるのか?」

今回は、サウジドローン攻撃以降の、NY原油先物市場の投機筋の動向について書きます。

9月14日(土)に事件が起き、事件の影響を反映した取引が、翌週の16日(月)に始まりました。

投機筋の動向を知る上で手掛かりになるのが、CFTC(米商品先物取引委員会)が毎週金曜日の引け後近辺の時間帯に公表する、投機筋の建玉明細です。(いわゆるCFTC建玉明細です)

このCFTC建玉明細は、その週の火曜日時点のデータを収録しています。

サウジドローン事件の発生日に最も近い、事件発生3日後にあたる9月17日のデータ(9月20日公表)は、前週(事件が発生した週の火曜日)に比べてほとんど変化がありませんでした。

また事件10日後のデータ(9月27日公表)も大きな動きはありませんでした。

原油相場は、事件発生直後の16日月曜日に瞬間的に上昇しましたが、その後徐々に反落する展開となっています。

原油相場の動きからも想像できるとおり、瞬間的な上昇に投機筋が関わったとみられるものの、その後、同じ日の月曜日か遅くても翌日火曜日の取引終了前までに、投機筋は退出していたとみられます。

つまり、投機筋は“サウジの生産量半減”でも瞬間的に(長くて10数時間程度?)しか動かなかったと考えられます。

在庫や備蓄があるから問題ない、あるいは数週間で生産が回復する、といった生産減少への手当てができる、生産減少が長期化しない、などの市場に安心感を与える報道が素早く出たことが一因とみられます。

しかし、サウジの生産量半減という、インパクトが非常に大きく見える材料で、数日も経たないうちに投棄筋が撤退したということは、そもそもその材料にインパクトがなかった可能性があります。

投機筋の撤退の素早さは、サウジにドローン事件が“自作自演”である可能性が「ゼロではない」ことを示唆していると筆者は思います。

図:NY原油先物市場における投機筋の買い・売り枚数 単位:枚
NY原油先物市場における投機筋の買い・売り枚数

出所:CFTC(米商品先物取引委員会)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。