[Vol.1433] 中長期ならば、中央銀行の保有高の動向に注目

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。77.89ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,844.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年05月限は12,595元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年04月限は566.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで878.4ドル(前日比2.55ドル拡大)、円建てで3,901円(前日と変わらず)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月3日 10時51分頃 6番限)
8,054円/g
白金 4,153円/g
ゴム 230.3円/kg
とうもろこし 43,720円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「中長期ならば、中央銀行の保有高の動向に注目」
前回は、「金(ゴールド)、米雇用統計で短期の価格変動大」として、ドル建てスポット金(ゴールド)の推移(5分足 終値)について、述べました。

今回は、「中長期ならば、中央銀行の保有高の動向に注目」として、中央銀行の金(ゴールド)購入量について、述べます。

長期視点の金(ゴールド)価格の動向に注目します。長期の価格変動に影響を与え得るテーマはいくつかありますが、近年目立っているのが「中央銀行」です。

多くの中央銀行は「外貨準備高」の一部を金(ゴールド)で保有しています。世界的な金の調査機関「WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)」は、今年1月、2022年の中央銀行の金保有(純購入)が55年ぶりの高水準だったと公表しましたが、今月、「過去最高」だったと訂正しました。(調べたところ、1970年前後以前のデータのプラスとマイナスが逆だった模様)

ウクライナ危機勃発(2022年2月)以降、西側(欧米や日本など)と非西側(ロシアやロシアに同調する国々)との間の溝が日に日に深まっています。こうした中で、非西側が、西側が多用する「米ドル」ではない通貨を模索する中で金(ゴールド)が選ばれていると考えられます。

また、ロシアは、制裁下でも資金の融通を可能にするための「抜け道」として、中国は、ウクライナ危機の混乱に乗じ、「自国通貨の安定化」と「脱米ドル」の両立を加速させる目的で、金(ゴールド)の保有高を増やしている可能性があります。

「中央銀行」の金保有高増加は、2010年代前半から目立ち始めていました。「非民主的な国々」の中央銀行の保有高増加が背景にあります。

スウェーデンのヨーテボリ大学のV-Dem研究所は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由・民主主義的な傾向を示す複数の側面から、「自由民主主義指数」を算出しています。(同指数は、0から1の間で決まり、0に近ければ近いほど「非民主的」、1に近ければ近いほど「民主的」な傾向が強いことを示す)

例えば、「中国」の、2013年の同指数は「0.05」、2021年は「0.04」でした。「非民主的」な傾向が、長期化していることがうかがえます。また、もともとポーランドやブラジルは「0.80」を超える「民主的」国でしたが、2021年は「0.50」近辺まで低下し、「非民主的」な傾向が強まっていることがうかがえます。

もともと非民主的だった国々や、近年、非民主的になった国々の中央銀行による保有高増加が、世界全体の金(ゴールド)需要を増大させる要因になっていると言えます。

図:中央銀行の金(ゴールド)購入量(WGCの訂正版より)
図:中央銀行の金(ゴールド)購入量(WGCの訂正版より)

出所:WGCの資料より筆者推定

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。