[Vol.2078] フォルクスワーゲン問題の呪縛から解放

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。57.55ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,277.56ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は15,150元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年12月限は437.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2688.71ドル(前日比18.49ドル縮小)、円建てで13,863円(前日比87円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月21日 19時09分時点 6番限)
21,138円/g
白金 7,275円/g
ゴム 308.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NYプラチナ先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「フォルクスワーゲン問題の呪縛から解放」
前回は、「プラチナは積立投資でこそ、真価を発揮する」として、ドル建てプラチナ、金(ゴールド)価格推移(月足終値)を、確認しました。

今回は、「フォルクスワーゲン問題の呪縛から解放」として、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移を、確認します。

以下の図は、フォルクスワーゲン問題の発覚を機に、多くの市場関係者や投資家の間で急減すると言われた、プラチナの自動車排ガス浄化装置向けの需要の推移です。

フォルクスワーゲン問題は、2015年9月に米国の環境保護局によって公表されました。フォルクスワーゲン社が違法な装置を使い、不正に排ガスの浄化装置のテストをくぐり抜けていたことを同局が公表しました。

これにより、多くの市場関係者や投資家の間で、同社が手掛けるディーゼル車の信用が低下し、同車種の自動車排ガス浄化装置に多く使われているプラチナの需要が急減する、だからプラチナはもうだめだ、もうプラチナ価格は上がらない、などとまことしやかに語られはじめました。

確かに20018年から2019年にかけて、やや減少したことを確認できますが、ささやかれていたような大規模なものではありませんでした。

新型コロナショックが発生した2020年は他のコモディティ(国際商品)と同様に、大きく需要が減少したものの、その後は急回復し、足元の水準は同問題が発覚した2015年とほぼ同じ水準です。プラチナはもうすでに、フォルクスワーゲン問題の呪縛から解放されていると言えます。

急減が起きなかった理由の一つに、内燃機関(エンジン)を有する自動車1台当たりの排ガス浄化装置向けの貴金属需要が増加したことが挙げられます。

フォルクスワーゲン問題発覚とほぼ時を同じくして、世界で脱炭素の動きが拡大していました。このころから、主要国で排ガス規制の強化が始まりました。排ガス規制の強化は、エンジンや排ガス浄化装置の性能を向上させる必要性を高めます。

筆者の推計では、2000年代、自動車1台当たりに使われる同需要向けの貴金属は3.6グラム程度でした。それが足元では4.8グラム程度に増加しています。

一部では、脱炭素の動きが拡大することで、世界でEV(電気自動車)が普及し、内燃機関を有する自動車の数は急減すると言われていました。このことにより、プラチナの同需要が減少する、との思惑がありました。

しかし、脱炭素の動きが広まっても、プラチナの同需要は回復・増加しています。脱炭素にも、プラチナの同需要を増加させる要因があったことに、注目しなければなりません。

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス
図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス
出所:Johnson Mattheyのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。