週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は先週比2.94ドル安の75.01ドル、ブレント原油は3.80ドル安の81.03ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。米ウォールストリート・ジャーナルが、UAEがOPECを脱退する可能性を報じたことで急落する場面がみられたが、UAEがこれを否定したことで大きく切り返す展開となった。

 先週は利上げへの警戒感が重しとなり軟調な推移となった。6日は続伸。中国の全人代で成長目標が5%前後に引き下げられたことが重しとなった。しかし、同国の需要回復期待やドル安が相場を押し上げる動きとなった。またエネルギー業界の国際会議「CERAウィーク」で米石油大手シェブロンのCEOが、石油市場はひっ迫しており、予期せぬ供給混乱に脆弱な状態であると指摘したことも支えとなった。7日は反落。パウエルFRB議長が議会証言で利上げペースの加速を示唆し、利上げ長期化への警戒感が高まったことが相場を押し下げる格好となった。8日は続落。引き続き利上げによる景気悪化懸念が相場を圧迫したことに加え、ADP雇用統計が堅調な内容となったことが利上げを後押しするとの見方が広がったことも重しとなった。9日も続落。米新規失業保険申請件数が増加したほか、失業保険の継続受給者数も昨年12月以来の高水準なったことも嫌気された。また米雇用統計がFRBの積極的な利上げに拍車をかける可能性があることも圧迫要因となっている。

NY原油チャート

 今週の原油相場は下値模索の展開が予想される。パウエルFRB議長がインフレ率の高止まりから利上げペースを加速させる可能性を示唆したことからドル高、NYダウ安となり原油市場も圧迫された。ここ数か月のパターンを踏襲してWTIは80ドル超えからの反落となり、目先は72ドル台が下値の目途とみる。14日発表の米CPIでインフレ懸念が高まれば再び株安、原油安の懸念が強まりそうだ。一方、10週連続で増加していた米原油在庫が減少に転換したことは注視が必要だ。また、原油の需給自体はタイト化してきているというのが石油業界の認識で、サウジアラムコのアジア向けOSPは2か月連続で引き上げられている。金融セクターによる外部要因で大きく下がった場面は良い買い場になると想定する。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。