[Vol.1440] 「2011年」は世界の転換点でもあった

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。74.00ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,915.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は11,965元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年04月限は529.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで910.5ドル(前日比1.30ドル拡大)、円建てで3,979円(前日比3円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月14日 大引け時点 6番限)
8,171円/g
白金 4,192円/g
ゴム 215.0円/kg
とうもろこし 42,580円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『2011年』は世界の転換点でもあった」
前回は、「東日本大震災発生から12年」として、12年前の3月11日の出来事を振り返りました。

今回は、「『2011年』は世界の転換点でもあった」として、自由民主主義指数が0.5以上および0.5未満の国の数を確認します。

東日本大震災が発生した2011年、世界では大きな変化が起きていました。自由で民主的な国家の数が減少に転じ、そうでない国家(非民主的な国家)の数が増加に転じた年でした。

今月、ヨーテボリ大学(スウェーデン)のV-Dem研究所は、「自由民主主義指数」の最新版(2022年版)を公表しました。この指数は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由や民主主義をはかる複数の側面から計算されています。

0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、民主的な傾向が弱い(民主的ではない)、1に近ければ近いほど、民主的な傾向が強いことを示します。

以下は、同指数が0.5以上ある民主的な傾向が強い国(ここでは民主国家とする)と、0.5未満の民主的な傾向が弱い国(ここでは前者に対し、非民主国家とする)の数の推移です。

ベルリンの壁崩壊(1989年)や、EU(欧州連合)発足(1993年)前後に、非民主国家の減少と民主国家の増加が同時進行しました。民主的であることが正義、とすら言われた時代です。

しかし「2011年」を境に、非民主国家が増加、民主国家が減少に転じました。(この年、非民主国家の数が106で統計史上最少、民主国家の数が68で同最多)。2011年以降、世界全体が、非民主的な色合いを強め始めたと言えるでしょう。民主的であることが否定的に映りやすい出来事が、同時多発したことが背景にあると、考えています。

リーマンショック後、欧米が大規模な金融緩和を行ったことで、信用が異次元のレベルまで膨張し始め、信用収縮への不安が拡大したこと、欧州が「環境問題」を強力に推進しはじめ、産油国・産ガス国との軋轢(あつれき)が大きくなり始めたこと、欧米が「人権問題」を強く主張したことを受け、かえって独裁国家からの反発が強くなったこと、アラブの春(北アフリカ・中東地域での民主化の波)が起きたものの、再び独裁色が強い状態に戻った国が複数あったこと、などです。

各所で、欧米が強く「良し」としてきた民主的であることを、否定する動きが目立ち始めたタイミングが「2011年」ごろだったわけです。

図:自由民主主義指数0.5以上および0.5未満の国の数(1975~2022年)
図:自由民主主義指数0.5以上および0.5未満の国の数(1975~2022年)

出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。