[Vol.1456] 「分断」はある。きれいな事ばかりではない

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反発などで。80.30ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,035.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,660元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年05月限は584.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1021.6ドル(前日比6.60ドル縮小)、円建てで4,299円(前日比2円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月6日 18時28分頃 6番限)
8,500円/g
白金 4,201円/g
ゴム 205.7円/kg
とうもろこし 42,100円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『分断』はある。きれいな事ばかりではない」
前回は、「川はほぼ逆流せず。『上流』への意識は重要」として、コモディティ価格が「原因」であるときのイメージついて、述べました。

今回は、「『分断』はある。きれいな事ばかりではない」として、自由民主主義指数0.2以下および0.8以上の国の数(1947~2022年)について、述べます。

ヨーテボリ大学(スウェーデン)のV-Dem研究所は、「自由民主主義指数」の最新版(2022年版)を公表しました。この指数は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由や民主主義をはかる複数の側面から計算されています。

0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、民主的な傾向が弱い(民主的ではない)、1に近ければ近いほど、民主的な傾向が強いことを示します。

以下は、同指数が0.8以上ある民主的な傾向が強い国と、0.2以下の非民主的な傾向が強い国の数の推移です。

ベルリンの壁崩壊(1989年)や、EU(欧州連合)発足(1993年)前後の、民主的であることが正義、とすら言われた時代は、非民主国家の減少と民主国家の増加が同時進行しました。しかし、2020年以降。逆の傾向が鮮明になっています。世界は再び「分断」に向かいつつあるのです。

西側諸国が「環境問題」を強力に推進しはじめ、産油国・産ガス国とのあつれきが大きくなったこと、欧米が「人権問題」を強く主張したため、独裁国家からの反発が強くなったこと、などが「分断」の背景にあると考えられます。つまり、「西側」と「非西側」の間にある溝が、年々深まっているのです。

日本で暮らしていると、こうした意識は生じにくいですが、世界全体を俯瞰すると「分断」は、存在することに気づかされます。

また、「分断」をきっかけに起きている「争い」は、(1)物理的争い(戦争、紛争)、(2)政治的争い(枠組、関税)、(3)思想的(人権、環境)などに分類できます。「分断」は、目に見える・見えないに関わらず、「争い」のきっかけになるのです。

「分断」の解消が、同危機や「インフレ」の沈静化に最も有効な手段です。制裁(不買い、ビジネス撤退、関税引き上げなど)は、直接的な沈静化策ではありません。

「インフレ」の沈静化のために、ウクライナ危機を終わらせなければならないのです(今の日本では、この議論が欠けている。インフレとウクライナ危機が別物として語られている)。

図:自由民主主義指数0.2以下および0.8以上の国の数(1947~2022年)
図:自由民主主義指数0.2以下および0.8以上の国の数(1947~2022年)

出所:V-Dem研究所などのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。