[Vol.1459] 原油急騰も追い風 高インフレ継続を印象付ける

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。80.25ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,017.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は11,730元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年05月限は588.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1003ドル(前日比2.10ドル拡大)、円建てで4,318円(前日比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月11日 16時46分頃 6番限)
8,550円/g
白金 4,232円/g
ゴム 205.7円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油急騰も追い風 高インフレ継続を印象付ける」
前回は、「三つの材料による支援で金(ゴールド)急騰中」として、最近の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマについて、筆者の考えを述べました。

今回は、「原油急騰も追い風 高インフレ継続を印象付ける」として、原油相場を起点に考える最近の金(ゴールド)相場への影響について、述べます。

足元、反発色を強めている原油相場に目を向けます。原油相場の動向も、金(ゴールド)相場の動向に影響を与えます。

原油相場は4月に入り、OPECプラス(OPEC(石油輸出国機構)13カ国と、OPECに加盟していない10カ国、合計23カ国で構成される産油国のグループ)が、「追加減産」をアナウンスしたことで急反発し、80ドルを回復しました。

以下は、原油相場の動向が与える金(ゴールド)相場への影響です。原油相場の動向は、金(ゴールド)相場に、上昇・下落、両方の圧力をかけ得る存在ですが、特に市場の関心が「高インフレ」、FRB(米連邦準備制度理事会)などの主要な「中央銀行の政策」に集まっているときほど、上下両方の圧力が(同時に)かかりやすくなると考えられます。

足元の原油相場の急反発は、「高インフレ」という印象を与えます。この印象によって生じる、「インフレ→相対的な通貨安」という連想は「代替通貨」起因の、「肌感覚の不安」は「有事ムード」起因の、金(ゴールド)相場への上昇圧力を生んでいると考えられます。

また、原油価格の反発は、西側の要求をはねのけ、非西側に属する産油国が価格つり上げを企図した動きを強めていることを示唆します。こうした動きの背景には、「非西側の西側への反発心増幅」、「西側と非西側の分断深化」があると考えられます。

このような背景は、非西側の中央銀行の金(ゴールド)保有量を増やす理由になり得ます。西側の資産を持たないようにするための策として(不安定な自国通貨も持ちにくいことも相まって)、金(ゴールド)を持つわけです。ここに「中央銀行」起因の上昇圧力が生まれます。

一方、下落圧力も発生し得ます。原油相場の急反発は、「需要増加」という印象を与えます。「需要増加」という印象が「景気回復期待」や株高を誘引し、「代替資産」起因の、金(ゴールド)相場への下落圧力を生んでいると考えられます。

また、「肌感覚の不安」減退は「有事ムード」起因の、「利上げ継続観測」は「代替通貨」起因の、下落圧力を生んでいると考えられます。

足元、金(ゴールド)相場へ、原油相場起因の上下両方の圧力がかかっていると考えられますが、金(ゴールド)相場が上昇していることを考えれば、原油相場起因の金(ゴールド)相場への圧力は、「上昇圧力が勝っている」と言えるでしょう。

図:原油相場を起点に考える最近の金(ゴールド)相場への影響
図:原油相場を起点に考える最近の金(ゴールド)相場への影響

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。