[Vol.1458] 三つの材料による支援で金(ゴールド)急騰中

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。80.74ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,013.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は11,680元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年05月限は587.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで995.25ドル(前日比14.35ドル縮小)、円建てで4,254円(前日比変わらず)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月10日 17時09分頃 6番限)
8,466円/g
白金 4,212円/g
ゴム 204.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「三つの材料による支援で金(ゴールド)急騰中」
前回は、「『疑う』ことが、もはや常識に」として、生成AIの問題点(現時点)について、筆者の考えを述べました。

今回は、「三つの材料による支援で金(ゴールド)急騰中」として、最近の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマについて、筆者の考えを述べます。

4月に入り、国内外の金(ゴールド)価格が、記録的な高値水準で推移しています。原稿執筆時点で、ドル建てスポット価格は2,000ドル/トロイオンスを、大阪の金先物(中心限月)は8,500円を超えて推移しています。ともに史上最高値水準です。

「有事ムード」「代替通貨」「中央銀行」の三つのテーマ起因の上昇圧力が、これらの価格を押し上げていると考えられます。以下は、筆者が考える金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマです(大阪金先物をはじめとした円建ての銘柄は、以下の七つに「ドル円の変動」を追加する)。

銀行の連鎖不安や、長期化するウクライナ危機などがもたらす、わたしたち市民が感じる肌感覚の不安は、資金の逃避先需要を増やす場合があります。金(ゴールド)は、その時の物色対象になり得ます。(有事ムード起因の上昇圧力発生)

市場が醸し出す「今年中の利上げ打ち止め」や「来年の利下げ」への期待、原油価格が高止まりしているために起きている高インフレへの警戒感は、金(ゴールド)の「代替通貨」としての需要を増やす場合があります。(代替通貨起因の上昇圧力発生)

また、ウクライナ危機が長期化する中、西側と非西側はお互いの主張を一歩も譲らず、双方の間にある「溝」が深まっています。こうした「分断深化」は、特に非西側の中央銀行の金(ゴールド)保有高を増やすきっかけになり得ます。非西側の間で、西側の資産を保有することを嫌い、消去法的に金(ゴールド)を選択する動きが出ている可能性があります。

このように、複数のテーマが重なると、別の経路で下落圧力が発生していたとしても、価格上昇が起きやすくなります。足元まさに、株価反発という「代替資産」起因の下落圧力が発生しているとみられますが、先述の3つのテーマ起因の上昇圧力によって打ち消され、価格上昇が起きているわけです。

図:最近の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマ(円建ては「ドル円の変動」も)
図:最近の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマ(円建ては「ドル円の変動」も)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。