[Vol.1461] 実は少量の減産しかしない!? OPECプラスの思惑

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。83.21ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,030.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,680元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年05月限は603.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1001.8ドル(前日比5.45ドル拡大)、円建てで4,329円(前日比78円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月13日 11時13分頃 6番限)
8,623円/g
白金 4,294円/g
ゴム 207.9円/kg
とうもろこし 41,970円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「実は少量の減産しかしない!? OPECプラスの思惑」
前回は、「なぜOPECプラスは減産をしてしまうのか?」として、主要産油国の収支が均衡するときの原油価格について、述べました。

今回は、「実は少量の減産しかしない!? OPECプラスの思惑」として、主OPECプラス減産参加国(20カ国)の原油生産量などについて、述べます。

以下は、OPECプラスにおいて減産に参加している20カ国(サウジ、ロシア、イラク、カザフスタンなど。イラン、リビア、ベネズエラは減産不参加)の原油生産量の推移です。減産実施時の「基準量」「生産量の上限」を追記しています。

大々的に「OPECプラス追加減産」と報じられたのは、4月3日でした。その報道を受けて原油相場はアジア時間から急反発しました。(前週末比、およそ5ドル高で取引がはじまった)

ウクライナ危機下、需給バランスが引き締まりやすいため、追加減産によって「世界のエネルギー事情がこれまで以上に危ぶまれる」という趣旨の報道が目立ちました。しかし、上図からは、OPECプラス(減産参加20カ国)の原油生産量は、さほど、減少しないように見えます。

筆者の推計では、追加減産決定によって引き下がった生産量の上限は、4月の原油生産量の推定値と大きく変わりません。現在のままでも「ほぼ減産順守」である可能性があります。「追加減産」のアナウンスで原油価格を急反発させることに成功し、それでいて原油生産量をさほど減らさない…。

OPECプラスは、「巧みな(?)」アナウンス効果と、わかりにくい(意図的であると思われる)減産の仕組みを利用して、価格上昇・生産量維持、という大きなメリットを享受している可能性があります。

図:OPECプラス減産参加国(20カ国)の原油生産量など(筆者推定含) 単位:百万バレル/日量
図:OPECプラス減産参加国(20カ国)の原油生産量など(筆者推定含)

出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料より筆者推計

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。