[Vol.1476] 中銀の方針転換はウクライナではなくリーマン

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。72.61ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,033.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は12,010元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年06月限は515.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで952.65ドル(前日比7.15ドル拡大)、円建てで4,234円(前日比32円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月9日 18時00分頃 6番限)
8,779円/g
白金 4,545円/g
ゴム 211.9円/kg
とうもろこし 41,450円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「中銀の方針転換はウクライナではなくリーマン」
前回は、「円建ては最高値更新、ドル建ては最高値タイも」として、最近の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマについて書きました。

今回は、「中銀の方針転換はウクライナではなくリーマン」として、中央銀行の金(ゴールド)買い越し幅について書きます。

世界的な金(ゴールド)の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が公表した最新の四半期の統計によれば、中央銀行の金(ゴールド)の買い越し幅(購入-売却)は、2023年第一四半期(1月から3月まで)も記録的な高水準(228.4トン)でした。この量は、第一四半期として過去最高です。

以下の図は年間ベースの買い越し幅です。仮に年内、第一四半期と同量の買い越し幅が続けば、2023年は史上最高となった2022年に次ぐ記録的な高水準になります(2022年は1,078.5トン)。

2010年以降、買い越し(純購入)が続いています。その2年前の2008年から、急激に売り越し(純売却)幅が小さくなりはじめました。2008年は、リーマンショックが起きた年です。

中央銀行が金(ゴールド)の保有量を増やすのは、「脱米ドル」のためであり、その背景には「ウクライナ危機」があると報じられています。筆者はこの点は、若干膨らませる必要があると考えています。

「脱米ドル」ではなく、それを含んだ意味を持つ「脱西側」、背景は「ウクライナ危機」ではなく、その14年前(2008年)に起きた「リーマンショック」です。

図:中央銀行の金(ゴールド)買い越し幅 単位:トン
図:中央銀行の金(ゴールド)買い越し幅

出所:WGCのデータをもとに筆者推計

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。