[Vol.2197] エビデンス(証拠)を伴う長期のテーマ

著者:吉田 哲
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原油反落。中東情勢の鎮静化期待などで。92.35ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,818.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年09月限は16,630元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年06月限は636.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2719.95ドル(前日比23.85ドル拡大)、円建てで14,730円(前日比17円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月17日 18時03分時点 6番限)
25,312円/g
白金 10,582円/g
ゴム 388.8円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「エビデンス(証拠)を伴う長期のテーマ」
前回は、「エビデンス(証拠)とナラティブ(物語)」と題して、ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ(2026年2月28日以降)を、確認しました。

今回は、「エビデンス(証拠)を伴う長期のテーマ」と題して、世界の自由民主主義指数(人口加重平均)を、確認します。

前回の図で示した(6)中央銀行と(7)非伝統的な有事に直接的に関わるデータを確認します。この点が、エビデンス(証拠)であり、ナラティブ(物語)と異なる点です。

世界的な金(ゴールド)の統計を収集・算出・公表する「ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)」は、世界全体の中央銀行の買い超し・売り越しの量を公表しています。各国の中央銀行の多くは、対外的に何かあった場合に備えて保有している外貨準備高の一部を金(ゴールド)で保有しています。

購入から売却を引いた量が「買い越し量」です。(6)の中央銀行に関わる、中央銀行全体の買い越し量の推移を確認すると、2010年ごろからはじまったと考えられる世界情勢の激変の流れが一因となり、ほぼ同じタイミングである2010年から買い越しに転じています。

2025年の中央銀行全体の買い越し量はおよそ863トン超でした。この量は、金(ゴールド)の全需要のおよそ17%にあたる大きな規模です。こうした、2010年ごろをきっかけとした中央銀行の動向が、金(ゴールド)相場の長期視点の「土台」の一つとなっているといえます。

以下の図は、その中央銀行が金(ゴールド)の買い越しを継続したことに関わりが深い、世界の自由度・民主度が低下したことを示す自由民主主義指数の推移です。(7)の非伝統的な有事が拡大していることを示すデータの一つです。

同指数はV-Dem研究所(スウェーデン)が算出・公表しています。法の支配、裁判制度、言論の自由など、多数の民主主義に関わるデータをもとに算出されています。図のとおり、この指数はおおむね世界全体の自由度・民主度の大きさを示してきました。

この指数が、2010年ごろを機に、急低下しています。2025年は0.273と、1960年代の冷戦期と同等の水準まで低下しました。背景には、2010年ごろからはじまった世界全体の大きな変化があると、考えられます。

時間軸が長いテーマである(6)中央銀行と(7)非伝統的な有事は、データを伴っています。こうしたデータは、長期視点で金(ゴールド)相場を支える「土台」の役割を担っているといえます。2010年ごろ以前に生まれた直観的なテーマであるナラティブ(物語)の要素が強いテーマと、一線を画すテーマでもあります。

ナラティブ(物語)は、直感的であり納得しやすいという特性があるものの、実態(値動き)がそのとおりでなければ、重視するべきではありません。投資家の皆さんを含む市場関係者の多くは、投資の際、重要視しているのは値動きであって納得感ではないはずです。

「納得感があれば、損をしてもよい」という投資家・市場関係者はいないはずです。引き続き、金(ゴールド)相場の分析にあたる際は、ナラティブ(物語)とエビデンス(証拠)を切り分けていただけると、良いように思います。

図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。