週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比0.99ドル高の70.35ドル、ブレント原油は1.00ドル高の74.38ドルとなった。

 前週末の海外原油は米雇用統計が強気の内容となったが、米株価が急伸したことでリスクオンの動きとなり、前日までの急落からの買戻しが優勢となった。

 週明け8日は続伸。引き続き急落後の買戻しが続いたほか、カナダのアルバータ州の山火事により日量18.5万B規模の原油生産が停止したことも支援要因となった。9日も続伸。中国の4月原油輸入量が日量1,030万Bと、今年1月以来の低水準となったことで売りが先行したが、米バイデン政権が今年後半にSPRの補充を開始するとの報から大きく切り返す展開となった。10日は反落。4月米CPIの伸びが鈍化したことで来月FOMCでの利上げ見送り観測が強まったものの、景気減速への警戒感は根強く、原油は売られる展開となった。EIA統計で原油在庫が予想に反して大幅増加となったことも重しとなったが、米国で夏のドライブシーズンを控えるなかでガソリン在庫が取り崩しとなったことは支えとなった模様。11日は続落。米新規失業保険申請件数が予想に反して悪化したことに加えて、米国の債務上限問題から景気悪化が意識されたことが重しとなった。リスクオフの動きからドル高、株安となり原油も売られる格好となっている。

原油チャート

 今週の原油相場は米国の債務上限問題で波乱含みの展開。WTIは4日に63.57ドルまで崩落した後に戻し基調となったが、米債務上限問題や米地銀の信用不安が懸念材料となりリスク回避の動きが加速している。12日に予定されていたバイデン大統領とマッカーシー下院議長との協議も15日の週に延期され、目先は今回の下落の下値を見極める動きとなりそうだ。ただ、OPECプラスは6月4日の会合で追加の減産を決める可能性が浮上。米国もSPRの拡充を行う予定となっており中長期での買い場探しのスタンスで臨みたい場面とみる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。