週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比0.01ドル安の70.84ドル、ブレント原油は0.38ドル高の75.49ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。米債務上限停止法案が上院でも可決されたことからリスクオフムードとなったことや、4日のOPECプラス会合で追加減産が期待されていることが相場を押し上げた。

 週明け5日は続伸。OPECプラス会合で現行の協調減産を2024年末まで延長することが決まったほか、サウジが日量100万Bの自主減産を行うとしたことも支援要因となった。ただ、主要国の景気見通しの不透明感が重しとなり上げ幅を縮小する展開となった。翌6日は主要国経済の弱含みによる石油需要低迷見通しから反落。米債務上限問題は解決したものの米国債の発行継続による金利の上昇懸念が強い。7日は反発、EIA統計で製油所稼働率が95.8%まで高まり、ドライブシーズンの本格化を控えて製品主導で買い意欲が高まった。8日は反落、イランと米国が協議し、石油輸出の制裁緩和と引き換えにウラン濃縮を減らす暫定的な合意に近づいていると伝わったことが相場を圧迫した。制裁緩和によりイランの原油生産は日量100万B超増加するとみられ、サウジの7月からの追加減産100万Bを帳消しとなる可能性がある。

NY原油チャート

 今週の原油相場は複数の米経済指標の発表に注目が集まる。OPECプラス会合での強気なサプライズで急騰始まりとなったが、その日のうちに大きく失速する形となった。現状はWTIは70ドル割れで買われ、75ドルでは売られるレンジ相場の様相となっている。市場では13日の5月米CPI、14日の米FOMC声明文公表に注目が移っており、それを巡るドルやNYダウの動きに原油も左右される展開となりそうだ。ただ、NYダウは景気悪化懸念から上値は重いものの直近のレンジ上限を伺う動きを見せていることは原油市場の下支え要因。また、米国の石油製品需要は2000万Bを割れた水準だが、今後ドライブシーズンが本格化することからこの時期の押し目は良い買い場になると予想される。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。